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政界インサイドレポート

鳩山内閣の公約実現に暗雲 笑いが止まらない財務省(上)
政界インサイドレポート
2009年11月24日 13:00

 鳩山内閣の発足から2カ月が経った。この間、中小企業への金融モラトリアムをめぐる閣内不一致や沖縄・普天間米軍基地移転問題の迷走、日本郵政社長、人事院総裁への天下り人事容認など、やることなすことケチのつきっぱなしだ。とはいえ、改革が1日にしてならないのも事実。歴史的な政権交代で50年間にわたった自民党政治からの転換をめざす民主党政治に、短期間で成果を求めるのも、評価を下すのも、酷というものだろう。ただし、問題点は次第にはっきりしてきた。第一に鳩山首相その人である。

<鳩山首相の「閣僚に政策丸投げ」で混乱>
 「今はオーケストラの始まり。閣僚が1人ずつ試しに音を奏でている段階だ。それぞれの演奏者の音が、全体として最高の音楽になるのが一番いい。存在感がないのが、見事な指揮者なんだ」
 鳩山首相は1カ月ほど前の報道各社との懇談会で、首相の役割についてそんなふうに語っていた。
 リーダーシップを発揮していないことを自ら認めたに等しいが、現在は平時とは違う。総理大臣が号令をかけなければ、官僚組織相手の大改革などできるはずがない。内閣全体の迷走はそこから始まっている。
 そのことを端的に物語るのが「母子加算」復活問題だった。
 民主党は、マニフェストで今年3月に打ち切られた生活保護の「母子加算」(子ども1人で月額約2万円)を復活すると公約し、長妻昭・厚生労働相は「政府の予備費で10月から復活させる」といったん宣言した。
 母子加算復活に必要な予算はわずか58億円、予備費は約1兆円もある。財源的にも無理な話ではないはずだった。ところが、財務省は憲法まで持ち出して強く反対した。
 「憲法で、『予備費の支出は内閣の責任でこれを支出する』と決められている。母子加算の廃止は麻生内閣が決めた方針だから使えない」という主張だった。臨時国会まで待てば、10月支給には間に合わない。
 長妻氏や副大臣、政務官は、「政権が代わったのだ」と再三にわたり財務省に掛け合ったが、はねつけられた。厚労省と財務省の対立は、鳩山首相の裁定に持ち込まれた。
 民主党幹部が明かす。
 「答えは簡単だった。鳩山内閣で母子加算の復活を閣議決定すれば、予備費は使える。最初から鳩山首相が“マニフェストにあるのだから出してやれ”と藤井財務相に指示すれば済んだのに、閣僚に任せたから藤井さんと長妻さんの対立を招いた。役人は、予備費を使うのがどれだけ大変かを思い知らせるために、長妻さんにわざと嫌がらせしたのだ」
 結局、鳩山内閣は母子加算復活を閣議決定したものの、支給は12月にずれ込んだ。1兆円の政策ならともかく、わずか58億円の財源を出すのに総理が財務省に頼まなければならないのは「異常」である。
 しかもその際、麻生政権当時の緊急景気対策で決定し、今年12月から支給開始される予定だった「子育て応援特別手当」(3~5歳児に3万6,000円・1回限り)は、直前になって執行停止された。民主党は、来年度から「子ども手当」を創設すると公約していることを理由にあげたが、子ども手当は早くても来年6月にならないと支給されない。子ども手当の支給を早めると同時に応援特別手当を廃止するならともかく、「半年後に払う」では何のための緊急対策なのかわからない。
 財務省にすれば、「1,254億円」の子育て応援特別手当を廃止し、「58億円」の母子加算復活でお茶を濁したのだから、笑いが止まらないだろう。“ゴネ得”で1,200億円を浮かせたのである。
 これに味をしめた財務省は、子ども手当の創設や高速道路無料化、ガソリン暫定税率廃止といった民主党のマニフェストを実施する財源が足りないと、財源確保の優先を要求し、鳩山政権は不況で景気対策が必要なのに、「無駄遣い廃止」の名の下に予算カットに突き進んでいる。

(つづく)

【千早 正成】


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