家庭用の電球にもLEDの波が押し寄せつつあるのもうなずけよう。東芝はじめ電気メーカーも、エコ商品を普及させる観点から白熱灯の製造を中止するようになっているほど。LED電球やLED照明が主流の座を占めるのも時間の問題と思われる。もちろん、課題もある。中国、韓国、台湾企業が製造している低価格のLED製品との競争も熾烈さを増しているからだ。
特に、中国では「グリーンテック産業」と称して、LED照明を積極的に政府が支援する体制を敷いているため、日本にとっては強力なライバルとなりそうだ。国家主導のLED照明プロジェクトを立ち上げ、上海、大連、シンセン、アモイなどには国家開発センターが設立されている。LED街灯に関していえば、全世界で90万台の設置が進んでいるが、そのうち60万台は中国国内である。この市場は年々倍々ゲームで膨らんでおり、2011年には500万台に達すると言われているほど。日本メーカーにとっても大きなチャンスになると予測されている。
というのも、中国の企業でLED照明に関連した特許を保有する企業は5%に過ぎないからである。大部分の中国企業はパッケージングやアプリケーションなど川下分野で安い労働力を武器に戦っているに過ぎない。一方、日本企業には特許を押さえた川上分野で力を発揮する余地が大きいのが強みといえるだろう。
その点、今回の総合展に参加していた日本企業には底力を期待できそうだ。LED技術をさまざまな形で応用、商品化している中小企業の存在は日本の未来を明るく照らしてくれるに違いない。大阪に本社を構える「中央電機計器製作所」のLED技術は消費電力を90%近くも削減できるのが魅力。さらにCO2も90%削減が可能との説明である。宇宙開発やナノテクの世界にも挑戦するという姿勢にパイオニア精神を感じた。
【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。
ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊はオバマ新政権の環境エネルギー戦略と日本への影響を分析した『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)。近刊には『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。
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