7. 単価が安ければ売れても数字は伸びない
PBが売れたとしても、小売業全体の売上げが伸びたかといえば、決してそうではない。08年度の小売業の売上げランキングを見ると、1位のセブンアンドアイHD、3位のイトーヨーカ堂は1.8%減、7位のダイエーに至っては13%も減少している。
また、PBの衣料品を数多く導入している百貨店も、8位の高島屋は6.4%の減、15位のそごうは4.0%、17位の大丸は5.9%減、18位の伊勢丹は7.2%減と、軒並み売上げをダウンさせている。
百貨店の売上げ不振原因は、衣料品や高級品などを含め全体の売上げが減少しているからで、とすればPBどころの騒ぎではないともいえる。
もっとも、小売業にとってはPBが売れても、それは消費者がNBからの鞍替えしただけで、ほとんど売上げの伸びにはつながらないと考える方が正論である。売上げは商品単価×客数(販売数量)×営業日数で計算する。PBは価格が安いので、商品単価は下がり、客数が同じなら売上げは下がってしまうというわけだ。
逆にPBがNBと同等の価値を持ち、たとえ価格が半額であったとしても、賢い今の消費者が同じ商品を2つ買うなんてまずありえない。つまり、安いから余分に買ったり、無駄に使ったりする消費者はいないから、結果的に売上げは伸びないのである。
◎荒利益が高くても新たにコストが発生
ならば、荒利益はどうだろうか。確かに広告宣伝費や営業費がかからず、工場の空いたラインを利用したりするので、メーカーの卸値は下がる。だから、小売業にとっては高い荒利が確保できるのは間違いない。
セブンアンドアイHDやイオンは、さらにPBの価格競争力を増すために、「商品の原材料や製造法などの見直し」としている。乾いた雑巾をさらに絞るような企業努力によって、荒利益が確保されたまま価格は下がっていくのである。
しかし、ここで見逃してはならないことがある。それは開発や管理にかかるコストだ。PB開発には社内にスタッフが必要になり、当然人件費が発生する。また、買い取り商品になるので、売れ残った分のロスを見ておかなければならない。
さらにセブンアンドアイHDやイオンのように、商品1アイテムあたりの発注量が膨大になれば、その在庫をストックしておく倉庫の賃料もかかるし、在庫管理や物流のコストも新たに発生してしまう。
いくら荒利益が高いといっても、こうしたコストの分を差し引くとなると、決して利益率は高くならない。各社の決算報告を見た時に、PBが売れても営業利益が低くければ、こうした部分が影響していると言わざるを得ないのである。
【剱 英雄】
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