(有)緑の農園 「つまんでご卵」
代表取締役社長 早瀬憲太郎さん
鶏好きの養鶏家。独自のこだわりが1個50円の高級卵を生み出す
「物心ついたときから鶏と一緒でした。私の最初の記憶は、母親と一緒に自宅の庭で卵を探すというものなんですよ」
(有)緑の農園の社長、早瀬憲太郎さんはこう切り出した。社名よりも商品名の方が有名かもしれない。「つまんでご卵(らん)」。県道567号線を海へむかって走ると右手に、だいだい色の黄身を指でつまんだ写真の大きな看板が目に入る。黄身がつまめる卵、「つまんでご卵」をつくっている養鶏所が緑の農園なのである。品質をどこまでも向上させたい、と考える早瀬氏が苦心の末に作り出した傑作卵は一個50円という高価格にもかかわらず、生産が追いつかないほどの売れ行きを見せている。
早瀬さんに、まずは養鶏を始めたきっかけから伺った。
「母親と一緒に卵を探すこと、これが最初の記憶でした。卵を見つけたときの母の喜ぶ気持ち。これが私の中に入ってきまして、私の心の奥深くに根付いたんだと思います。当時、卵は高級品でしたから」
幼少期から鶏と触れ合って育った早瀬さんは、鶏の魅力にとりつかれるようになる。小学5年生のときには近所の種鶏場に足しげく通った。田中彰治代議士が経営する種鶏場である。ここには最新の設備とブロイラーの原種など、珍しい鶏がたくさんいた。ただ鶏が好きだった少年は、ここで近代養鶏に触れ、商いとしての養鶏まで好きになってしまった。
「当時の作文に、大人になったら養鶏家になりたい、と書いていました」
高校を卒業し、東京農業大学へ進学。ニワトリの生物学的研究をした。卒業後は鶏の総合商社やワクチン会社などに勤務。ところが持病の慢性腎炎が悪化し、退社を余儀なくされる。
「頭に浮かんだのは私の遺伝子を持つ子どもたちが同じように腎臓を悪くするのではないか、ということでした。それはどうしても避けたいので健康な体になるための研究を自分なりにやりました。そして行き着いたのが食べ物です。健康な食べ物を食べることが健康には欠かせない。古くからの夢がよみがえりました。よし、養鶏をやろう、と」
【柳 茂嘉】
(有)緑の農園 「つまんでご卵」
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