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特別取材

PB(プライベートブランド)がもたらした功罪(10)
特別取材
2009年12月 4日 08:00

10. PB開発はメーカーと協力して行なうこと

 今のPBブームは低価格にスポットがあたっているため、ブームが去れば売上げは頭打ちになると思われる。 日本のPBがデフレ禍における低価格のみの開発を続けている限りは、売上げは伸びないだろうし、在庫過多で収益を悪化させるのが落ちだ。
 しかし、米国では高品質PBが完全にマーケットを開拓したように、日本でも中長期的に見れば、「新しい価値」をもったPBは必ず拡大していくはずである。
 日本の小売業は、今の少子成熟社会では明らかにオーバーストア。とくに食品や日用品がメーンの商材であるスーパーにとって、どの店にもある商品を並べているだけでは差別化は図れないし、逆に価格競争に陥ってしまう。とうてい収益アップなど望めない。
 言い換えれば、小売り側が、消費者が何を求めているかをきちんと調査し、商品の生産段階にまで首を突っ込み、他店にはない商品を開発していくこと。それが高品質PBの開発であり、小売業にとっては極めて重要だと言える。
 もっとも、小売業の力だけではPB開発は難しい。原材料や生産のノウハウ、コスト管理、日々の技術革新などについては、メーカーの方が優れているからだ。ただ、マーケット、いわゆる市場のニーズについては、消費者に近い小売業の方が熟知しているはずである。  小売業はメーカーと協力して、自店の顧客に合った商品を開発していくことが必要なのだ。

◎PB開発は小売業にとって生き残りのカギ

 高品質PBだけではなく、環境や健康志向に配慮したPBがあってもいい。イオンのトップバリュは、「グリーンアイ」で有機栽培や減農薬など健康、地球環境に配慮した生鮮および加工食品を販売。「共環宣言」も環境保全型の日用品として売り出している。

トップバリュの「グリーンアイ」は、有機栽培や減農薬等による生産を心がけるトップバリュ・共環宣言は再生資源を有効活用

 それがいまひとつ知名度が上がらないのは、プロモーション不足だからだ。PBである以上、広告宣伝費がカットされるのは仕方ないが、売場を利用したデモンストレーションは不可欠。商品をもっと買い物客にアピールすべきである。
 また、物流や在庫管理にも気を配らなければならない。在庫量と販売数量を、POSデータを通じてチェックし、ロスを出さない商品生産体制を作り上げていくことが重要だ。  もちろん、小売店としての暖簾、いわゆるストアロイヤルティがなければ、いくら良いPBを作っても販売には結びつかない。
 こうしたPBづくりには、専門知識、マーケティングやコスト管理の能力、メーカーとの交渉力を持つ専任スタッフが必要である。こうした知識や能力は日々の仕事で身に付くわけではないから、十分な教育を施すか、優秀な人材をスカウトしなければならない。
 消費者に愛され、収益に結びつくPBは、簡単にできるものではない。PB開発を通じて、自店に必要な商品とは何かを問い直すことが、小売業にとって生き残りのカギになる。

(了)

【剱 英雄】


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