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特別取材

九州の先端医療技術研究の行方は 九州大学大学院医学研究院 橋爪教授に聞く(3)
特別取材
2009年12月 4日 08:00

負担がさらに小さい低侵襲治療が可能に

 ―「九州大学先端融合医療研究開発センター」として、具体的にどのようなテーマを手掛けていく計画でしょうか。

 橋爪 大きく3つのテーマがあります。九州大学としてこれまで取り組んできた「ロボットと低侵襲治療」と「ドラッグデリバリーシステム」、そして最近注目を浴びている「再生医療」です。
 まず「ロボット」ですが、今年5月に、私が理事長を務めている「社団法人ベーダ国際ロボット開発センター」(福岡県宗像市)が設立されました。ベーダセンターは、国内外のロボット技術研究者と、私ども九州大学医学部、そしてロボット開発企業のテムザックが中心となり、医療・介護・生活支援向けロボット開発を主眼に設立したものです。
 ベーダセンターで開発された医療介護向けロボットは、「九州大学先端融合医療研究開発センター」で臨床試験を行ない、薬事認可の支援や技術改良へのフィードバックをすることで、ロボットの医療介護分野での実用化が大きくスピードアップされると思います。
 私としては、以前、テムザックさんといっしょに開発した「プレホスピタルケアロボット」のような救急医療支援システムを広く公的な場所に整備できれば、医者がすぐそばにいなくても、ロボット技術と通信技術の導入によって緊急の診断と治療が可能になり、治療を早く開始することで救える命が多くなると思っています。

 2つ目の「ドラッグデリバリーシステム」ですが、具体例をお話しした方がわかりやすいと思います。たとえば、標的とする細胞表面や分子に特異的に接着するプローブの開発と、それを目的とする患部に集中して運ぶキャリア技術がそのひとつです。熊本大学名誉教授で、現在崇城大学の前田教授が専門的に研究されているのですが、癌が疑われる患者さんの臓器の、どの部分に癌細胞があるのか、その疑われた臓器に集まりやすい物質を開発して、MRIで癌の場所をこれまでよりも数倍明確にする造影剤の開発に成功しています。
 今までの日本では臨床試験が難しかったため、アメリカやエジプトなどで臨床試験を行ない、良好な結果が得られています。この技術が実用化されれば、臓器内の癌の場所が明確になり、切除するにも抗がん剤投薬で治療するにも、健康な部分への影響を極力抑え、効果的で患者さんへの負担がさらに小さい低侵襲治療が可能となるのです。
 九州大学工学部の片山教授は合成化学の専門家ですが、これら特殊な製剤の開発に重要なナノ粒子化や、必要なタンパク質の開発に取り組まれていて、医学分野と工学分野の融合による先端医療技術の開発に大きな貢献をいただいています。

(つづく)

【松尾 潤二】


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