(有)緑の農園 「つまんでご卵」
代表取締役社長 早瀬憲太郎さん
平飼いで育てた鶏の卵はうまい。
鶏が好きな人は養鶏ができない。イメージしていただくと分かると思うが、養鶏場はまるで監獄である。狭いケージに鶏を並べて給餌と採卵をする。単位面積当たりの採卵成績をどこまで伸ばすかを追求し続けた結果が、現在の養鶏なのである。経済的な側面を捉えるならば、効率を求めるのは正道だ。目的に対する手段としては最良の方法だが、鶏好きには耐えられない光景だ、という。
「鶏の声が私には分かるのです。大きな鳴き声、あれは悲鳴なのですよ。助けてくれと言っているのです」
そこで早瀬さんが取り組んだのは、鶏にストレスをかけない仕組みづくりだ。鶏好きが養鶏家になったのである。
まずは環境。平飼いと呼ばれる方法で飼育する。鶏舎にケージはなく、小屋の中に仕切られたおよそ一間半(約3m×3m)の部屋に鶏をおよそ200羽ずつ入れて、自由に動けるようにする。好きなときに歩き、羽ばたける環境だ。部屋のとなりには運動場までついている。ここの鶏は1日に一万歩歩くのだという。飼育する数を200羽に区切るのは、鶏のコミュニティ形成のためだとのこと。あまりに多すぎる数を同じ部屋で飼うと、鶏にストレスがかかるという。早瀬さんの言葉を借りるなら、鶏の家庭としては200羽くらいが適当なのだ。大都会のマンション生活が一般的な養鶏だとしたら、ここは家庭的な養鶏なのである。このように鶏が満足できる環境を作り上げたのだ。ここの鶏たちは低い声でコォーコォーと鳴く。全くうるさく鳴かない。これは満足している証拠なのだという。鶏舎特有のにおいもほとんどなく、クモの巣やハエなどの虫も見当たらないのは驚くほどだ。
つぎに大事なのがエサ。鶏にとっても食事は大切な楽しみなのだ。一般的な配合飼料ではなく、早瀬さん独自レシピによる飼料を自分でブレンドする。この作業が大変しんどい。早瀬さんが飼う7,000羽の鶏が一日に食べる飼料は1t弱にもなる。これを毎日毎日まぜるのだ。何が入っているのか分からない配合飼料ではなく、一つ一つ自分の手で確認しながら混ぜることが大事なのである。この飼料の中身のうち、1割だけ秘伝の材料が入っているとのこと。これが卵をワンランク上に仕上げてくれる秘密なのだそうだ。
いい鶏からはいい卵ができる。そのゆるぎない信念と独自の研究がこだわりの自然卵「つまんでご卵」を作り上げた。
早瀬さんの夢は配合飼料の純国産化と超低コレステロール卵の生産だという。早瀬さんはこれからも挑戦を続けていく。
【柳 茂嘉】
(有)緑の農園 「つまんでご卵」
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