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特別取材

九州の先端医療技術研究の行方は 九州大学大学院医学研究院 橋爪教授に聞く(4)
特別取材
2009年12月 7日 08:41

多くの企業の参加が内定している
「九州大学先端融合医療研究開発センター」

 ―「九州大学先端融合医療研究開発センター」としての3つ目のテーマ、「再生医療」についてもご説明いただけますか。

 橋爪 京都大学の山中先生のIPS細胞研究で一躍注目されている「再生医療」ですが、「幹細胞」を培養して、従来の技術では不可能であった「不全に陥った臓器の再生」を行なおうというものです。
 たとえば、脳卒中や事故で麻痺した神経の再生、心臓の虚血や狭心症で機能障害に陥った心臓の再生、さらに肝硬変などで機能不全になった肝臓の再生も、この「幹細胞」培養技術が実用化されれば、これまで絶対困難と思われてきた臓器の再生が可能になり、多くの命が救われることになります。

 北九州地域はとくにC型肝炎で苦しんでいる患者さんが多く、従来の治療技術では、家族からの肝臓移植という限られた方法でしか助けられないケースがほとんどでした。家族の犠牲によって肝炎患者への治療が行なわれるという、望ましくない選択肢しかなかったのです。
 しかし、自分の細胞を取り出して臓器を再生させる技術が確立されれば、こうした肝炎治療の問題も劇的に改善されます。また、人工透析で多くの時間を拘束され、自由な生活ができない腎不全で苦しむ多くの患者さんなどにも、再生治療は実用化が待ち望まれている先端医療技術です。

 「九州大学先端融合医療研究開発センター」では、再生治療の開発から臨床まで多くの研究者の頭脳を結集し、関連技術を持った企業にもご協力いただいて、この九州の地で再生治療の実用化を進めたいと考えています。

 ―九州で先端医療の研究を進めるのに、ハンディはありませんか。

 橋爪 これまでは正直なところ、医療技術分野で新しい研究をやろうしても、東京や関西が中心でした。それは、研究者の絶対的人数の偏りもありますが、協力いただける技術を持った企業の本部がどうしても東京、関西が中心だったからです。九州には支社しかなく、技術研究を進めるパートナーシップに限界があったことも原因の一つではないかと思います。

 しかし、今回の「九州大学先端融合医療研究開発センター」は、地域振興の目的も含めて、経済産業省から九州大学に設置判断をいただいたものです。医療関連技術の開発を行なっている日本を代表する企業へも積極的な参加を呼びかけていただき、すでに多くの参加が内定しています。
参加企業にとっても、薬事申請で優先的に扱ってもらえるPMDA(医薬品など申請重点窓口)スーパー特区として九州大学病院が認められているので、開発期間の短縮が可能です。また、医師主導の治験を支援する体制がそろっていることもあり、メリットが非常に大きいので、新しいパートナーシップを築けると確信しています。

(つづく)

【松尾 潤二】


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