2.顧客起点と品質向上の追求が生む商品
今日、FRの商品は価格でも品質でも、他のチェーン店はもとより、百貨店の平場の商品、セレクトショップの定番品さえ凌駕しそうな勢いがある。それを可能にしているのが、海外工場への生産委託によるグルーバルな商品調達である。
これを細かく見ていくと、第1に材料(糸、生地、付属品)開発による高品質の維持と、服の機能(保温やドライ)に重点を置くこと。第2は着やすいスタイルとサイズ、形。第3は若年から老年(日本人にも欧米人)までの全客層に合わせたアイテムの絞り込み。第4はサイズを男女、若年老年、人種の間で違うことに留意。第5は色数を品種によって1~4色、または8色(以上)に拡大。第6は商品カテゴリーごとに品種間でコーディネートする。そして最後は取り扱いや洗濯の簡便さである。
シーズンごとの企画仕様にこうした商品の基本条件をつけて、素材メーカーや提供工場すべてに指示し、さらに出来上がってくる商品の一つひとつを細かくチェック管理することで、その商品力の高さを世界に示しているのである。
ユニクロは、10数年前までは商品の返品を受け付けるキャンペーンも実施していたが、今日の商品力はこうした顧客起点の商品づくりと生産体制のレベルアップ、平準化の飽くなき追求で培われたといっても過言ではない。
ベーシックとトレンドの絶妙なバランス
ユニクロの商品が売れている理由に「ベーシックなアイテムだから」がある。例えば、ポロシャツやクルーネックセーター、ダウンジャケットなどがそうだ。
消費者の嗜好や着る人間を選ぶトレンドは、当たりはずれがあって必然的に売上げのリスクを伴う。言い換えれば、ベーシックなアイテムだからこそ、老若男女に売れるのである。ただ、それだけなら他社もやっているし、単なるトラッドショップになってしまう。
ユニクロらしさは、ベーシック路線を主眼としながら、常にホットなファッション要素を盛り込もうとしていることだ。企画部門はコレクションの新作発表から基礎的な情報を蓄積し、トレンド先行店の調査やグローバルチェーンの商品情報を収集して仮説を立てる。
それらに基づいて試作品を作り、さまざまな社員の意見を聞いて仕様を変更するなどの試行錯誤を繰り返して、ようやく生産態勢に入るのである。
こうした考えのもとに生まれたのが「スリムボトムス」や「ブラトップ」であり、昨年ぐらいから顕著になっているホットカラーを加えた色のバリエーションである。 ベーシックアイテムにも必ず毎年、ホットなファッションの要素を加える。ベーシックなアイテムだからこそ、素材や色で楽しんでもらう。これがベーシックとトレンドを絶妙なバランスで盛り込んだユニクロの商品力なのである。
【剱 英雄】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら