九州の企業ならではの、医療と結びついた競争力のある技術開発を
―「九州大学先端融合医療研究開発センター」への期待が大きく膨らみますが、九州でこのプロジェクトを進める意気込みをお聞かせいただけますか。
橋爪 政権交代があり「九州大学先端融合医療研究開発センター」も予算の見直しが終わるまで実際に設立できるか不安がありました。しかし、新政権でも九州にこの先端医療技術開発の拠点を作ることは理解され、予算執行にGOサインが出たので安心しています。
まずは来年3月末までに施設の基本設計を終え、入札、建設会社決定など諸手続きを進め、平成23年3月の立ち上げを計画しています。このプロジェクトには国や県も期待が大きく、いろいろな面でサポートしていただけると思います。こちらも、テーマ選定や潜在技術の洗い出しを進め、国や自治体の予算が確実に獲得できるよう準備していかなければなりません。
将来の日本社会にとって、医療にとって、本当に役立つ先端融合医療技術の開発が実現できると信じています。是非、大型プロジェクト予算をこの拠点で獲得していこうと思っています。
政権交代もありますが、今、日本の社会で必要とされている経済の活性化や社会環境改善のキーワードは「イノベーション」です。そのなかで、環境問題の解決に役立つ「グリーンイノベーション」ばかりが注目を浴びていますが、私はあえて「命のイノベーション」を訴えたいと思います。心身の健全や、生命体の存続にとって必要な「命のイノベーション」こそ、今の日本が取り組んでいかなければならないテーマだと思います。もちろん、再生医療を含めた人間のための命のイノベーションが根本ですが、生態系のなかで動植物とどのように共棲していくか、広い意味で「命のイノベーション」に取り組んでいければ素晴らしいと思います。
―九州の自治体や企業、関係の方々へ期待されることはありますか。
橋爪 おかげさまで「九州大学先端融合医療研究開発センター」の設立は決まりましたが、これから地元の皆さまのご協力がなければ、せっかくの先端イノベーションセンターも十分に機能を発揮することはできません。福岡の地で社会的・経済的に波及効果の大きな先端医療技術の研究を進めるには、まずは安定した運営資金を確保しなければなりません。
地元企業の皆さまには、積極的な財政支援の検討をお願い申し上げます。そして共同研究に是非参加いただき、九州の企業ならではの、医療と結びついた競争力のある技術開発に、ともに取り組んでいただければと願っています。
例えば、九州電力さんであれば遠隔医療のプロジェクトや被爆センサー、JR九州さんであれば各駅での緊急医療対応装置の開発、西部ガスさんとガス探知災害救急の研究、飲料水メーカーさんなら医療と水との関係をテーマとした研究など、さまざまなテーマへの取り組みが可能だと思います。
この他にも、先端技術を持った地元のベンチャー企業と、先端医療技術の開発実用化に取り組めれば素晴らしいと思います。
是非、九州の皆さまに「九州大学先端融合医療研究開発センター」へのご支援、ご協力をお願い申し上げます。
【松尾 潤二】
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