福岡市漁協の力は絶大である。国土交通省九州地方整備局発注の工事を『口頭』によるクレームで止めてしまったのである。しかも、いったん工事再開に同意しながら、前言を撤回し、揺さぶりをかけた形跡が残っていた。しかし、子細に公文書を検証していくと、漁協の力を逆に利用した九州地方整備局による「ねつ造」の可能性が浮上する。
データ・マックス取材班が、九州地方整備局に情報公開請求して入手した今年3月26日付けの公文書である「契約変更理由書」には『博多港の関係漁協から、浚渫工事による濁りの関係で工事区域周辺の漁場への影響が懸念されるため、工事の着工を見合わせるよう申し入れがあり、平成20年12月9日付けで、工事の一時中止を行っていたところであるが、平成20年4月20日に着工同意の見込みとなった』とある(注・平成20年4月20は平成21年の間違いである。九地整側は日付の間違いを認めている)。この文書が年度をまたいでの工事延期を可能にしたと思われるが、本当に合意が存在したのかどうか怪しくなっている。
同年9月2日には、2度目の契約変更が行われ、その時の「契約変更理由書」には、『工事再開に向け漁協関係者との調整により平成21年3月末に4月からの工事再開で内諾を得られたため、平成21年4月20日からの工事再開で話を進めていたが、当日になっても正式な同意は得られず、引き続き一時中止の処理を行った』とある。3月時点での工事への同意は反故にされていたことになるが、契約変更がこれほど安易に行われたとは到底考えがたい。
実は、3月時点の工事への同意という事実などなく、年度をまたいでの工事を容認するための便法だったのではないだろうか。
その証拠に、九州地方整備局と漁協側との「打ち合わせ記録」(画像参照)には、
「2009年3月 9日 ・工事再開に前向きな動きがあった」
「2009年4月20日 ・再度、組合員から工事再開を延ばして欲しいとの意見が出てきたため、工事を見合わせる」
と、簡単に記されている。
「工事再開に前向きな動きがあった」との記述からは、とても工事再開が可能とは思えず、ましてや「変更契約書」まで結ぶ状況とは思えない。
九州地方整備局は、年度が変わることで契約自体が無効になることを恐れ、実体のない「合意」を「変更契約」の根拠とし、公費支出への大義名分を「ねつ造」したのではないだろうか。
(つづく)
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