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特別取材

ファーストリテイリングの商品力は本物か(3)
特別取材
2009年12月 9日 08:00

3.グローバル生産の背景に職人技と顧客起点

 昨今の低価格ファッションには、グローバルな生産態勢があるのは周知の通り。それはチェーン店の世界では以前から行なわれていたことで、FRが先鞭をつけたわけではない。
 ただ、かつてのチェーン店は、商社や素材メーカーが勧めた素材や工場のなかから選択するケースが多かった。しかしFRは、他社に丸投げするのではなく、すべて繊維メーカーと共同開発、もしくは自社の提携工場で行なっている。これは欧米のSPAともかなり違う点だ。顧客の要望を吸い上げて改良された「ブラトップ」
 欧米企業は素材や工場などの委託先を決め、トータルな生産管理技術を確立する方向で考える。これなら産地や工場が変わっても、同じ品質レベルの商品が生産できるからだ。
 だが、FRは当初「産地や工場が変われば品質が保てない」と、欧米流を良しとしなかった。だから、日本から素材や縫製の熟練職人「匠」を工場に派遣して、徹底して自社の品質標準を確立。ある種、職人的技能を重視した、日本企業的なやり方を貫いた。
 さらに売場に並ぶ商品についても、お客の苦情を聞き入れて、素材や着心地などの改善点はすべて商品企画にフィードバックし、生産態勢まで改善している。
 今年夏にヒットしたブラトップは、顧客の「Tシャツを着る時にブラジャーをつけたくない」との要望から、毎年改良を重ねて行き着いた商品。自社が企画した商品の素材や縫製、消費者の不満や好みをきめ細かく追求するのがFR商品力であり、武器なのである。


既存商品も日々進化を遂げる

 こうしたFRスタイルで、店舗に並ぶ各アイテムも日々進化を遂げている。08年冬に大ヒットした 発熱保温肌着「ヒートテック」もそうだ。今年は従来の発熱、保温、保湿、吸汗速乾、抗菌、ストレッチ機能に、「静電気防止」「形状保持」を追加。男性24型、女性13型の合計37型、最大23色のカラーバリエーションを揃えている。
 08年は合計で2,800万枚を売上げたが、今年は前年比8割増の5,000万枚を全世界に売り出す。FRの商品力で看板商品に育ったヒートテックだけに、その売れ行きはFRの先行きをも左右する。つまり、さらなる価値を付加して、商品としての進化を目指す考えだ。

2,800万枚を売り上げてもさらなる進化を目指す「ヒートテック」

 恐らく、静電気防止はウール素材と重ね着したときの「ビリッときた」状態、形状保持は温かいからずっと着ていたら型くずれした―など「顧客の不満」を吸い上げて付け加えられた機能だろう。成長するには、商品力のさらなる向上は不可欠と考えているのだ。
 今年は、イオンやしまむらなどがこぞって類似品を発売。しかし、他社は発熱、保温のどちらか機能を訴えるだけにすぎず、両方を兼ね備えるのはヒートテックだけである。
 ユニクロは今冬のTV-CMで、ジャケットやダウンの下にヒートテックを1枚着るスタイリングをアピール。機能のみならずファッション性も強調している。ヒートテックは、暖冬が続く日本にあって、もはや気候変動さえ味方につけた商品と言える。

(つづく)

【剱 英雄】


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