昨年10月、国土交通省九州地方整備局が発注した『博多港(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事(第2次)』は、福岡市漁協のクレームで、事実上、施工業者決定当日に工事が止められてしまった。
工事中止の理由は、「あなご」や「手長ダコ」の稚魚が死んでしまうから、というもの。しかし、その裏付けデータがなかったことを、九州地方整備局も漁協側も認めている。ただ「慣例、慣習に従って」(九州地方整備局の説明)施工業者を漁協の「博多湾漁業管理委員会」に通知し、同日に漁協側に呼び出しを受け、工事中止を申し渡されていた。申し入れの正式な文書もなく、口頭でやりとり。公文書としての残されたのは、漁協側との「打ち合わせ記録」(画像参照)1枚きりというお粗末さである。杜撰な事業執行と言う他ない。
問題は、工事が停止した状態で、年度をまたいでしまったことである。昨年10月に入札、契約と済ませていたが、同工事は施工業者が決定した10月29日には、事実上着工を止められ、翌30日には漁協側から「国が各支所と話をして貰うしかない」と突き放されている。
今年2月までの交渉は「早期再開に向け、各支所を訪問するが状況に変化なし」という有り様だ。年度替りまでわずかな時間しかなかったにもかかわらず、工事再開のメドは立っていなかったのだ。この状態で年度を越えれば、当然事業は中止。入札のやり直しということになっただろう。しかし、残された公文書の記録は、このあたりから怪しくなっていく。
昨日報じたように、「打ち合わせ記録」では、
「2009年3月9日 ・工事再開に、前向きな動きがあった」
という程度の状況でしかないのに、年度末の3月26日付けの公文書である「契約変更理由書」には『博多港の関係漁協から、浚渫工事による濁りの関係で工事区域周辺の漁場への影響が懸念されるため、工事の着工を見合わせるよう申し入れがあり、平成20年12月9日付けで、工事の一時中止を行っていたところであるが、平成20年4月20日に着工同意の見込みとなった』とある(注・平成20年4月20は平成21年の間違いである。九地整側は日付の間違いを認めている)。「前向きな動き」という表現と「着工同意」には、かなりの差がある。
九州地方整備局は、年度をまたいで事業が中止になることを恐れ、ないはずの「同意」をねつ造した可能性がある。
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