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特別取材

ファーストリテイリングの商品力は本物か(4)
特別取材
2009年12月10日 08:00

4.商品力を支えるブランドロイヤリティ

 ではなぜ、百貨店や総合スーパーがFRのような商品力をつけることができないのか。1つはSPA(製造小売業)と単なる小売業の違いである。もう少し詳しく言えば、買う側が良しという品質を追求する点と、メーカーという作る側が考えた品質の商品を仕入れて売る点が異なるのである。
 FRは前者の立場で、品質と機能を対価格とのバランスで落としこみ、商品づくりを行なう。しかし、百貨店や総合スーパーの商品づくりはメーカーに任せざるをえず、割引など売るための企業努力でしか自社の戦略を確立できない。
 2つ目は、FRには企業のイメージづくり、店舗からのメッセージ、信頼感、期待度といった武器の存在がある。すなわち、ブランドロイヤリティが商品力を支えているのである。

すでにブランドロイヤリティを確立したユニクロ。

 今年春、FRは傘下の「ジーユー」で990円ジーンズを発売した。すると、他社も価格を下げたもので対抗したが、過熱する報道合戦にまんまと乗せられたようにも思える。
 それは、ジーユーがユニクロの生産本部とデザイン部という重要部署のバックアップ、徹底したコスト削減のシステムを持つのに対し、他社は中国工場の「空きライン」を利用するなど、綱渡りの生産態勢であの値段を実現したに過ぎないからだ。FRの卓越したビジネスモデルと自社の急場しのぎビジネスを混同して、勝てるはずがないのである。

戦略とシステムがあるFRだからできる

 ここまで来ると、もはや2位以下のチェーン店は、FRに真っ向勝負、同じ土俵で戦いを挑んでもほとんど勝ち目はないと思われる。
 ましてや、百貨店や総合スーパーのように、いまだに商品政策やシステムを変革できないところが同社の商品や価格戦略をそのまま真似したところで、何の意味も持たない。低価格ジーンズの競争もメディア戦略の一貫
 低価格ジーンズの例を上げるまでもなく、深みにはまればはまるほど、不毛の価格競争に飲み込まれて現場は混乱し、収益を落としてジリ貧になるのがおちである。
 仮に、他社がFRと全く同じ商品、価格構成で挑んだとしても、売上げアップはほとんど期待できないだろう。それはなぜか。消費者はすでに「ユニクロというブランド、商品」だから来店し、ショッピングしているからである。
 つまりFRには、あの商品を生み出す組織、人材、情報収集、ネットワーク、コミュニケーションなど能力が備わり、それらが有機的に結びついて企業としての武器になり、同社の一人勝ちを支えているのである。すなわち、フォーマットができているのだ。
 メディアはどうしてもFRとの対立構図を商品や価格の面だけで捉えがちだ。しかし、その背後にあるマーケティングやコンセプト、企業戦略を分析しなければ、本当のFR対策は見えてこないと思われる。

(つづく)

【剱 英雄】


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