ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

特別取材

ファーストリテイリングの商品力は本物か(5)
特別取材
2009年12月11日 08:00

5.大ヒット商品なしには成り立たない

 では、FRの商品力は本物なのか。また、弱点はないのか。最後にその見地から、FR対策を考えてみよう。目下、FRの最大の強さで、かつ脆さであるのが、基軸商品を前提とした「単品一発ヒット主義」である。
 春夏シーズンであれば、基軸商品はTシャツの「UT」やドライ関連商品、ブラトップ、秋冬であればヒートテックやダウンジャケットに他ならない。
 こうした単品の絞り込みで品質はさらに向上し、TV-CMなどの販促キャンペーンとの連動で、売上げが飛躍的にアップしている間はいい。しかし、こうした好循環の歯車がひとつ狂い出せば、そのリスクがデフレスパイラル的に売上げに返ってくる。
 絞り込んだ基軸商品の単発ヒット狙いという戦略は、これこそ綱渡りのような危うさが伴う。商品の企画スタッフは、音楽業界のヒットメーカーや凄腕プロデューサーではないのだから、たて続けにヒットを生み出すなどありえない。しかし、今のFRはそれによって成長性が大きく左右されている。
 ユニクロの場合、レギュラー店の店頭で展開される商品は現在200~300アイテム。これで08年9月から14カ月連続で対前年比で増収を続けているのだから、それはヒット商品なしには成り立たない「極めて危うい戦略」と言わざるを得ない。

091211_fr5_1.jpg選択肢の狭さが弱点になる可能性

 「安くて良い服」、「誰もが着こなせるカジュアル」といっても、衣料品ビジネスは当たり外れがあるリスキーな世界。いくらメディアミックスでプロモーションを仕掛けても、消費者の心をとらえない商品は売れないのである。
 そうしたリスクを分散するためにも、単品絞り込み、ヒット頼みの戦略は限界だろう。それを見越してか、FRは今年春に高級ブランドデザイナーのジル・サンダー氏とデザインコンサルティング契約を締結。10月には新ブランド「プラスジェー」を発売した。
 これは日本を含む世界6カ国で予想を上回る売れ行きを記録。ファッションをリードするパリの旗艦店でも売り切れが続出するなど、好調な出足となった。091211_fr5_2.jpgフランス人が認めたことで「かっこいい服」づくりと多ブランド化に入ったFRだが、このプラスジェーにしても単品絞り込みの路線は変わらない。
 プラスジェーは商圏が広い都市型店やオンラインでの展開のため、こうした話題性の商品を持たない郊外店は今後厳しくなることが予想される。商品のレベルが上がったはいいが、ベーシックな商品だけに郊外店の客が絶えず購入するとは考えにくいからだ。
 とりたてて商品力に死角のないFRだが、単品絞り込みによる選択肢の狭さが致命的な弱点になる可能性はある。他社がつけ入るスキはそこにあるかもしれない。

(了)

【剱 英雄】


*記事へのご意見はこちら


※記事へのご意見はこちら

特別取材一覧
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル