昨年10月、国土交通省九州地方整備局(以下、九地整)が発注した『博多港(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事(第2次)』は、開札日当日に漁協側のクレームで工事がストップしたにもかかわらず、着手金179,382,000円が施工業者である「宮川・淺川経常建設共同企業体」に支払われていた。
しかし、公文書公開請求で九地整から入手した文書には、工事の「着手届け」がない。
通常、公共事業の着手金は、保証契約と「着手届け」が前提とされる。しかし、問題の工事には「着手届け」が存在しない。
九地整に確認したところ、港湾関係の事業には「着手届け」は必要ないのだという。さらには、同じ国土交通省発注の公共事業でも、旧建設省関係の公共事業では「着手届け」を必須の書類としているが、旧運輸省関係分は必要としていないという。その他にも、異なる基準は少なくないという。
ダブルスタンダードがまかり通っているのだ。
九地整の担当に、「同じ国土交通省の発注工事でありながら、ふたつの工事基準があることは好ましくないのではないか。ダブルスタンダードは辞めるべきだ」と聞いたところ、「ご指摘のとおり。ダブルスタンダードであることは間違いない。おかしいと言われればそうかもしれない」と言う。
平成13年の省庁再編にともない、旧建設省と旧運輸省、さらには国土庁などを統合して誕生した国土交通省は、巨大官庁となった。しかし、それまでの工事基準を統一することを怠っていたということになる。
その結果、『博多港(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事(第2次)』のように、工事が止まっているにもかかわらず着手金を支払い、長期にわたって「税金」を眠らせるようなことになったのである。
民主党を中心とする政権には、こうした行政の不備を正すことも求められている。
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