昨年10月、国土交通省九州地方整備局(以下、九地整)が発注した「博多港(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事(その2)」は、工事の施工業者が決まった日から福岡市漁協側のクレームで1年近く工事が止まった。浚渫工事による「浮泥」の拡散で「アナゴやタコの稚魚」が死ぬとの理由だが、それだけなかったとの見方が存在する。
九地整と市漁協側との「打合せ記録」(画像参照)を見ると、『2008年10月29日 管理委員会の委員長へ施工業者が決まったことを通知』と記されている。さらに同日中に『話があるので会いに来るよう』依頼を受け、同委員会からアナゴやタコの稚魚が死んでしまうので『浚渫工事の実施を春までは見合わせてもらいたい』との要請が出される。この時点で事実上工事が止められたことになるが、漁協側が「施工業者」を通知されてから騒ぎ始めたことは極めて不自然である。
報じてきたとおり、市漁協側は工事前年の平成19年の暮れには「稚魚」の発生を把握しており、「浚渫工事を中止してもらうということになっていた」(市漁協組合長の話)、と明言している。博多湾の浚渫工事は平成16年から継続されていた事業であり、19年度も浚渫工事が行われることは漁協側も承知していた。
工事を止めるのなら、順番から言って、19年度浚渫工事の1期分で、大手マリコン・若築建設が施工した「博多港(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事」である。しかし、「博多湾漁業権管理委員会」がクレームをつけたのは、同年度浚渫工事の2期分となる「博多港(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事(その2)」だけなのだ。しかも、クレームは10月29日の開札日、九地整が「施工業者」を通知した直後に始まっている。 つまり、「施工業者」が気に入らなかった、ということになりはしないだろうか。
同工事の「施工業者」は、宮川建設(福岡市)と淺川組九州営業所(北九州市小倉南区)で構成する「宮川・淺川経常建設共同企業体」である。開札日当日になって工事中止を言い出した漁協側の真意は、施工業者が「宮川・淺川経常建設共同企業体」になったことへの不満ではなかったのか。
(つづく)
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