19日土曜、福岡県の中島孝之副知事が麻生渡知事に辞任を申し出た。県町村会などの団体から過剰な接待を受けていたことを受けての事態。県庁をはじめ政界にも波紋が広がる。
中島副知事は、県議会とのパイプ役や県庁内のごたごたを一手に引き受ける存在として知られてきた。能吏であるとの評価がある一方、「汚れ役」としての一面も指摘されていた。
その中島副知事を突然襲った「接待疑惑」は、様々な問題を内包している。
最大の問題は、中島副知事にすべての責任を負わせ、事態を早急に収めようとの思惑が透けて見えることだ。
県庁幹部らが接待を受けていたのは、県町村会をはじめ同会が事務局を兼ねる市町村会振興協会など複数の団体とされる。1996年に発覚した県庁のカラ出張問題で「財布」をなくした県幹部にとって、残された貴重な「財布」だったことになる。町村会や県関係の団体の金は、もとをただせば税金。公金への意識の低さが招いた事件でもある。中島副知事の辞任だけで終わらせることなく、関係した職員すべての氏名の公表と処分が求められる。
麻生知事は、副知事からの辞任の申し出を受けて開いた記者会見で、副知事自身の説明責任について聞かれ、「捜査対象として報じられている中、皆様の前に出ても、適当ではないと言わざるを得ない。よって、説明責任を果たすことはない」と明言した。しかし、辞任したから説明責任が消滅するとは思えない。県のナンバー2として、疑惑の実態について説明するのは当然ではないだろうか。トカゲの尻尾きりは許されないのだ。
解明されるべきは、隠された「財布」の実態だけでなく、なぜ県庁内部の腐敗がなくならないのかということである。カラ出張問題に懲りずに、公金に手を出す体質はどこに起因しているのか、徹底した検証が必要である。
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