こども病院人工島移転計画は、吉田宏市長の政治姿勢を雄弁に物語っている。06年市長選では「こども病院人工島移転を白紙に戻す」と訴えておきながら、患者家族や市民の反対を無視して強行する態度に転じた。公約の重さを省みないことに関しては、歴代市長の中でも群を抜いている。さらに問題なのは、施策の決定過程がことごとく隠蔽されることだ。
こども病院をめぐっては、人工島事業の「検証・検討」でつまずいた。市役所内部だけでの事業見直しは密室での作業だった。案の定、当初は会議の議事録さえ作られていなかったことがデータマックスの指摘で明らかとなっている。その隠蔽姿勢は最後まで変わらず、結果、85億5,000万円のこども病院現地建て替え工事費を128億3,000万円に水増ししたうえ、この数字に積算根拠がないことが判明する。明らかなねつ造だが、計算の基になった「大手ゼネコン」による「工事費は1.5倍必要」との文書を「破棄」したとして隠蔽を重ねる。
同事業の成否の鍵を握るPFI事業の内容についても、今年春に公表しながら、議会直前に突然見直しを表明。ゼネコンの参入を容易にするためとしか思えないものに変更されてしまう。この時の経過についても、詳しい説明はなされていない。
こども病院問題は、なにもかも密室で決められ、市民への十分な説明がなされないままになっている。吉田市政の特徴のひとつでもあるが、政策決定過程がまるで見えないのだ。
06年市長選のマニフェスト討論会では『市民の知らないところで、ものごとが決まるのはおかしい』と言い切り、政策決定過程をオープンにすると訴えた吉田市長。しかし、3年の間、自身の言葉を実践したことはない。
(つづく)
【市政取材班】
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