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特別取材

【食への挑戦者たち】ベビーリーフ農家の挑戦(3)
特別取材
2009年12月22日 08:00

自分の野菜には自分で値段をつける
八女市・秀興園 溝田典秀さん

 電気だけではない。ハウスの建設もしなくてはならないし、暖房設備なども設置しなくてはいけない。費用がかさむ。
 新たな事業を始める障壁は金銭だけではなかった。周囲の農家たちは溝田さんの行動を奇妙に感じ、反発もあったという。通行の邪魔になるので電柱を立てないでくれ、などなど。溝田さんは一軒一軒説得してまわったという。
 周囲も理解を示してくれたことで電照菊をスタートさせることができた。その後、電照菊だけではなく、当時珍しかった洋花まで多種多様な花を手がけるようになる。

 独自のものを、よりよい品質で提供しつづけること。それにより自分でイニシアティブをとって価格設定までできるようになれるはず。その思いを胸に直販所まで設けたが、うまくいかなかった。そんな折、バブル経済が崩壊し、いよいよ花き業界に暗雲が漂い始める。
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 ちょうどその頃、溝田さんはたまたま自動車の営業マンに出会ったという。
「その車のセールスマンが自動車屋と花き農家は逆ですね、というのですよ。自動車は一定期間でモデルチェンジをしたり、新車を発表したりと少しでも商品サイクルを短くしようと工夫する。一方で花は少しでも長く、きれいな状態を維持するように苦心する。その話しを聞いてひらめきました」

 花の場合、きれいな期間がどれだけ長いかが問題となる。生産農家はそのための工夫を重ね品質のいいものをつくる努力をする。結果として商品サイクルが長くなる。売れにくくするような構図を農家自らつくっているのではないか。

(つづく)

【柳 茂嘉】


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