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小沢発言は日本を危機にさらす 2つの重大発言(上)
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2009年12月17日 08:01

 「行政には口を出さない」とかで、米軍普天間基地移設や景気対策など、鳩山内閣が直面する諸問題への小沢一郎民主党幹事長の具体的言及はない。が、小沢氏が与党・民主党のキーパーソンであることは国内外に知れわたっている。それだけに小沢氏の言動には注目が集まるが、本人はどこまでそれを自覚しているのか。「国民生活第一」を掲げる民主党は、小沢発言によって国民が危機にさらされたらどうするのか。

<日本人誘拐事件>
 「小沢は一体何を考えているのか」という同じキーワードで、問題の質は異なるものの最近二つの深刻な声があった。一方は「世界を敵にするのか」という米国在住者、もう一方は「あの前のめりには活動家たちさえ心配している」という大阪在住者の報告だ。前者は国際情勢に通じ、後者は関西の在日コリアン(在日韓国、朝鮮人)世界に詳しい。
 同じ思いを抱いていた矢先の11月18日深夜0時過ぎだ。「イエメンで日本人技術者誘拐」の第一報に、まさか、と思いつつ頭をよぎったのは「早くも反応したか」だ。事件概要が判明したのは約2時間後。JICA(国際協力機構)との契約でイエメンで働く日本企業社員を、反政府系部族が政府に拘束されている親族の釈放を求める交換要員に誘拐したという。昨年5月に誘拐された日本人女性観光客と同じパターンである。女性人質は誘拐した部族と政府の交渉が早期に成立し、無事に解放された。
 今回の事件も昨年同様に早期決着を見たが、解決までの経過は明確にする必要がある。それというのも、イエメンはアルカイダの隠れ拠点にもなっているからだ。誘拐された技術者は民間人とはいえ、JICAという外務省所管の独立法人が行なう事業に関わっていることから、「日本政府の一員」と位置付けられている可能性がある。中東には実体不明ながらアルカイダ以外にも多数のイスラム過激派グループがあり、過去の活動や声明から相互に連携している形跡もある。彼らのネットワークが侮れないのは、国際情勢をかなり詳細に把握していることだ。
 そこで看過できないのが、最近の小沢氏の一連の言動である。

<安易な宗教批判>
 まず11月10日、和歌山県にある真言宗総本山、金剛峰寺を参拝した小沢氏が口にしたのが「キリスト教は排他的で独善的」、「キリスト教よりましだがイスラム教も排他的」という発言だ。小沢氏から宗教談義が出ること自体が驚きだが、驚愕すべきは自らの立場もわきまえず、安易に宗教批判を展開したことだ。各メディアの報道によれば前段に仏教への称賛があり、仏教との比較で先の発言になったと思われるが、一国の実質リーダーを自認しているであろう政治家の発言とは考えられない。世界にどれだけのキリスト教徒、イスラム教徒がいるかがまるで頭にないのではないか。
 自らの発言が自分はもとより、日本人全体にどうハネ返ってくるか。リーダーとしての自覚がない人物と判断されても仕方あるまい。世界人口の約4割弱がキリスト教、2割弱がイスラム教であることへの認識があれば、こんな発言ができるはずもない。アルカイダに代表されるように、どの宗教にも過激な原理主義者がいるもの。宗教的理由が動機になる場合もあれば、「我々を冒涜した」と小沢発言にこと寄せて日本からカネを引き出す口実に使われる恐れがある。結果として常にリスクを負うのは、先のJICA契約社員や観光客のような弱い立場の民間人だ。
 小沢発言はロイター、ウォール・ストリート・ジャーナルなどで世界に発信された。論評抜きであっても各国政府、情報機関、そして非難された当事者たる宗教団体が「小沢が仕切る日本」という捉え方をしてもおかしくない。そのリアクションがあったときに小沢氏はどう責任を取るのか。リスク管理の概念が感じられない民主党、というイメージしか残らない。
 宗教に触れるのであれば、むしろ国内の選挙に直接影響力を持つ創価学会、統一協会、幸福の科学など新興系団体への評価を聞きたいものだが、マスメディアにその感性はなさそうだ。
 上記とは異なるものの、同様の不安を抱くのが外国人参政権問題への小沢氏の言動だ。

(つづく)


恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。


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