仕事が無く、いよいよ食うに困っていた時のこと。ペンは剣よりも強し。常日頃、自分は刀をペンに持ち替えた武士だと自負しているが、「武士は食わねど高楊枝」なんて言っている場合じゃない。ついに、街中で拾ってきた求人情報誌をめくった。
「世間ではネットカフェ難民が増えている。取材も兼ねて、ネットカフェなんてどうだろう」。そう考えて、福岡市内のネットカフェ求人をピックアップしていった。そもそも、自分が難民化しようとしているわけで、求人を見れば「この店はソフトクリームが食べ放題。この店は愛想の悪い店員がいたなあ」などと、ほとんどの店に行っていることに気付いた。
あるネットカフェの求人に目が留まった。給料は他店よりも若干いい。その上、「幹部候補として正社員になれます!」という内容もある。群を抜いた待遇の良さだ。しなしながら、その店舗所在地は中洲。中洲のことは良く知っているつもりだったが、そこにネットカフェがあったかどうか記憶にない。
直接、店のある場所に行くと、記憶にないのも当然だった。確かにネットカフェではあるが、フリードリンクでネットを利用したり、マンガを読んだりして過ごす一般的なものではない。昔のゲーム喫茶が形態を変え、オンラインカジノを利用し、おそらくは賭博行為を行っているであろう、言わば「ネットゲームカフェ」というものだった。
オンラインカジノサイトは、カリブ海の小国といった賭博が合法とされる地域で開設されている。法務省刑事局は、「国内からの参加を一概に合法と考えるのは間違いだ」としているものの、オンラインカジノが複数のサーバーを経由しているため、賭け金の流れやシステムの立証は困難。つまり、賭博行為を行う「ネットゲームカフェ」を検挙するには、現場で賭博行為に係る現金のやり取りを押さえるしかない。そうなると、警察の見回りが来そうな時は店を閉めるといったイタチゴッコに陥る。
2009年11月23日、博多警察署と県警本部生活環境課は、インターネットを使って賭博営業を行っていた中洲の店を摘発。経営者及び従業員と客の女を逮捕した。こうした「ネットゲームカフェ」は暴力団の資金源になっているという指摘もある。実際に捕まるのはトカゲのシッポだ。
景気がさらに悪化した2009年の年末においても、中洲には「ネットゲームカフェ」が点在している。需要があるのだろう。行く末を悲観し現実逃避、破滅への一歩を踏み出す人が増えているのだろうか。そもそも、商売として行われる賭博は胴元が必ず儲かるもの。パチンコ然り、公営ギャンブル然り。まして違法賭博ともなれば、裏でどのような操作が行われているか分かったものではない。その上、遊べば賭博罪である。警察の取締強化がどうのこうの言う前に、我々市民がこうした違法賭博に手を出さないことが撲滅への近道だ。君、トカゲのシッポになりたまうことなかれ。
(つづく)
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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