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特別取材

PB(プライベートブランド)がもたらした功罪(8)
特別取材
2009年12月 2日 08:27

8. PB開発になかなか踏み込めない百貨店

 先だって百貨店の岩田屋が本店のイベント「定番コレクション」で、2万1,000円の限定コートを販売した。人気スタイリストの協力を得て、主に通販のチャンネルをもつブランドメーカー「アクター・クローゼット」と組み、アンゴラとウールの混紡で通常なら6万円はする価格を半額以下に引き下げたのである。
値入れ率も問題が先に立ち、百貨店はPB販売に二の足を踏む
 先行して行なった通信販売では200着を売り、催事を合わせると1,500着の販売を見込んだというから、すべて完売したとすれば3,150万円にも達し、額としては決して低くない。
 ただ、イベント用の目玉商品、素材がかなり上質なこと、スタイリストとのコラボレーションなどの条件を差し引けば、岩田屋が手にする荒利益は決して高くないと思われる。 メーカー側もまとまってこれだけのロットがはけるならと、原価に少し利益を乗せたくらいで卸したと考えられ、こちらもそれほど荒利益は確保できていないはずである。
 1回きりのイベントならそれでもいいかもしれないが、これは双方にとって決して長続きする条件ではない。これについて岩田屋も「今後もこうした低価格商品を定番化していくことについては未定」と苦渋をにじませる。
 しかし、百貨店にとっての課題は単発の目玉商品ではなく、いかに荒利益がとれる「自主企画商品」を開発し、販売していくかである。

◎値入れ率を下げて価値ある商品を売る

 現在、百貨店の衣料品売上げはどん底の状態にある。その最大の要因は、どのブランドも変わり映えがしなくなった「同質化」で、背景にはセレクトッショップなどに比べると「高い値入れ率」があるといわれている。
 従来なら高い集客力と坪効率を実現していたため、値入れ率が高くてもそれを十分にカバーできる売上げと利益を確保できた。しかし、消費者の商品に対する目が肥え、不況による節約ムードが浸透するなかで、もはや高い値入れ率を可能にする取引先などありえない。
 岩田屋が2万1,000円のコートを自社オリジナルとして恒久的に販売できないのは、いざ継続して売るとなるとどうしても高い値入れ率を確保しなければならず、結果的に小売価格が上がって売上げ不振を招くことを恐れるからだ。
 百貨店が高い値入れ率を要求せざるをえないのは、派遣社員の人件費や売れ残り、返品のリスクもあるから。しかし、売上げ不振を招いた同質化から抜け出すには、価値の高い商品を買いやすい価格で販売したり、新たなブランドを開拓することが不可欠である。  そのためには値入れ率を下げることが必要で、自ら企画にタッチしたり、100%買い取りを前提として荒利益を確保するといった、自主企画商品の開発に取り組まなければならない。そこで「PB」をいかに活用していくかが大切になるのである。

(つづく)

【剱 英雄】


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