9. スーパーの競争力を示せる食品ではPBは不可欠
百貨店と並んで苦戦しているのが、ダイエーやジャスコといったGMS(総合スーパー)である。なかでも、これまで比較的に売上げを確保してきた食品部門においても、競争の激化や少子化の影響で、2010年は90年の需要金額とほぼ同等という見方もある。
さらに女性の社会進出によって、生鮮食品や総菜以外に、下ごしらえ済みの食材、加工食品など「中食市場」も拡大。外資を含めてさまざまな産業からの進出が予想され、新たな激戦の様相を呈している。
今後、競合激化のなかで食品部門が対抗していくには、消費者が限られた時間のなかで買い物を済ませられるような来店動機として、生鮮・総菜などの主力商品以外に、その店舗が取り扱う商品が他店にはない競争力や優位性を持たなければならない。
すなわち、生鮮や総菜の強化はもちろんだが、加工食品においても調理の手間が省ける下ごしらえした食材など、いわゆるHMR(ホームミールリプレイスメント/持ち帰りサービス)充実を含め、他のスーパーなどとの差別化を図っていくということだ。
こうした他店との差別化、自店の優位性を保つ商品として、PBの開発が必要になるのだ。単なる低価格ではなく、その商品を買う意味や意義、食材を探す手間が省けるPB。従来のPBから一歩進んだアップスケール(高品質)PBということになる。
◎米国のスーパーで登場した高品質PBはNBより質は上
高品質PBは85年、カナダの食品卸ロブローズ社が北米で「プレジデンツ・チョイス」なる高品質PBを発売したのが始まりと言われている。米国では88年に同社がチェーンスーパーにライセンスを与えて販売がスタートした。
90年代に入ると最大手のウォルマートからA&Pまでもが参入し、食品のみならず雑貨にまで広がっていったのである。ここでもう少し詳しく解説するなら、高品質PBとは品質はナンバー1、2のNBと同等もしくはそれ以上で、価格はNBより安く、「例外的な特徴」を持っているということだ。
一例としては、ロブローズ社が最初に成功させた「デカダント・チョコレート・チップ・クッキー」がある。これはNB(ナビスコ社など)に比べ、チョコレートチップの含有量が2倍(NB20%に対し40%)もあるというもの。それを全面的にアピールして消費者の信頼を得ることができ、今や全米18社以上のスーパーで採用されている。
03年、西友がモラージュ佐賀に店舗をオープンした時も、渡邊紀征前会長が記者会見で高品質PBの必要性を語っていたのは、記憶に新しい。
また、最近では環境や健康志向などの付加価値を訴えるPBも続々と登場している。実はこうした情報は海外で生活する日本人のブログでもたびたび紹介されており、意外に有名な話なのである。
【剱 英雄】
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