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未来トレンド分析シリーズ

トヨタのリコール問題とアメリカ経済の危機的状況(2)
未来トレンド分析シリーズ
2009年12月23日 08:00
国際未来科学研究所代表 浜田和幸

 すでにアメリカでは2009年前半、クライスラーもゼネラル・モーターズも相次いで破たんしている。そして、このフォードの体たらくである。一昔前であれば、日米の自動車摩擦が火を噴いたかもしれなかったが、基本的にはアメリカのビッグ3と比べトヨタなど日本の車への消費者の信頼にはいまだ厚いものがあると言えよう。でなければ、トヨタあるいは日本車全体に対する不買運動が起こったとしても不思議ではない。それができないほど、アメリカの自動車産業は危機的状況に陥っているわけだ。

 さらに言えば、アメリカの製造業そのものが厳しい凋落傾向にある。かつて自動車王国であったアメリカは生産台数でも販売台数でも中国に抜かれてしまった。そして環境対応などの技術的な面では日本に大きく水を開けられてしまっている。GMの再建計画も一向に目途が立っていない。GMの看板ブランドであったハマーはすでに中国に身売りをしてしまった。アメリカ経済の先行きがこれほど不安に思われたことはかつてないこと。局面を打開するため、オバマ大統領は日本を皮切りにアジア歴訪の旅に出た。

 日本滞在は23時間と短いものに終わったが、その後シンガポール、中国、韓国と周りアジア戦略に関する方向性を打ち出した。特に中国には4日間も滞在し、従来のアメリカとは大きく異なった対中融和策を打ち出したのが印象的であった。米中両国は協力し、金融、環境、エネルギーといった分野で新たな可能性を模索する合意が高らかに打ち出されたのである。

 しかし、最も注目を集めたのは中国滞在中にオバマ大統領がアメリカCNNのインタビューに応え、「2012年の大統領選挙で再選をめざさない可能性」に言及したことである。大統領就任後1年もたたない時点で再選を目指さないというニュアンスの発言を行った事例はかつてないことだ。その背景には圧倒的な支持を集めて大統領に就任したものの、その後は内政、外交問わず確たる成果を上げることができず、国民の間で失望感と不信感が広まっていることに本人自身が苦悩していることが指摘されている。

 支持率も就任直後と比べれば30%近く急落しており、歴代の大統領としてはかつてない信用失墜状況だ。就任した年の年末の支持率では史上最低を記録。「ブッシュの方が良かった」との声が急増している。外遊の場面では華々しいイメージやコミュニケーション上手を演出しているものの、国内の有権者からの厳しい批判の嵐を前にし、たじろいでいるオバマ大統領の実像が鮮明になってきた。

(つづく)

【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
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 国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。

 ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
 なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
 テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
 その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
 また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。

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