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未来トレンド分析シリーズ

トヨタのリコール問題とアメリカ経済の危機的状況(3)
未来トレンド分析シリーズ
2009年12月24日 08:00
国際未来科学研究所代表 浜田和幸

 夢と希望をスローガンにアメリカ国家の再生に向けての「チェンジ」を力強く打ち出したのが嘘のようだ。コペンハーゲンで開催されたCOP15でもオバマ大統領は国内のエネルギー業界に配慮し、温室効果ガスの削減目標にはコミットしなかった。というより、途上国を味方につけた中国に押し切られたのである。

 理想を掲げた国づくり、あるいは国民の意識改革といったシナリオはどこで狂ってしまったのか。その最大の原因はアメリカ国民の間に猛烈な勢いで広がりつつある雇用不安であろう。ウォールストリートに端を発した金融危機の大津波は全世界に波及したが、震源地に近いアメリカこそ最も大きな被害を受けた。その大津波の影響を克服できないどころか、ますます深刻な国民経済の液状化現象が起こりつつある。

 8,000億ドルもの公的資金を注入し、大手金融機関に対しては延命措置を講じたが、中小企業や一般国民の救済には全くと言っていいほど、手がつけられていない。潤ったのは民主党支持の経営者のいる大手金融機関ばかり。その結果、アメリカでは失業率がウナギ登りに増えている。公式のデータでは10%と言われているが、現実には20%近い。

 その影響は社会の隅々にまで及び始めている。例えば、国民の6人に1人が十分な食糧を買うことができず、政府発給のフードスタンプと呼ばれる食糧との交換チケットに依存するようになってしまった。特に児童に関しては100万人以上が空腹を抱えてベッドに入っていると言われるほど。農務省が発表した調査によれば、「5,000万人を超えるアメリカ人が日々の食に困っている」という。しかも、これは2008年の調査の結果である。その後事態は悪化の一途を辿っているため、2009年の調査が明らかになれば、この厳しい状況はさらに悪化していることは確実だ。

 「フィーディング・アメリカ」と呼ばれる貧しい人々に食糧を配給するフードバンクがあるが、全米各地で2,500万人に日々食糧を無償で配布している。ところが、急激に増える希望者に対し十分な配給ができない事態に直面し始めた。こうした食糧不足のアメリカ人の大半は金融危機のあおりを受け、職場から解雇されたにも関わらず新たな仕事がみつからないというケースである。

(つづく)

【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
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 国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。

 ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
 なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
 テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
 その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
 また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。

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