~大分県立芸術文化短期大学 教授 下川 正晴 氏
全世界的な景気低迷のなかで、比較的早く苦境から脱しつつある韓国。このトレンドは2010年も継続すると見ていい。韓国企業は09年第3四半期に、金融危機以前の実績水準を回復した。韓国株式市場の上場・登録1,381製造企業の同期売上額は231兆ウォンであり、営業利益率は8.0%に達する水準である。三星電子、LGディスプレー、現代・KIA自動車などの一部企業は、同四半期に史上最大の分期実績を記録した。このような成果は、グローバルな景気低迷のなか、専心企業が苦戦をまぬがれない状況で成し遂げられた好実績と評価される。
<企業の基礎体力を強化>
行き過ぎた楽観論は時期尚早だが、最近の韓国企業の好実績は、企業の基礎体力が強化されたことを立証するものだ。外国為替の危機が表面化して以降、韓国企業は財務的健全性、技術力およびグローバルなブランドイメージなどの点で、競争力を持続的に強化したといえるだろう。
米経済誌『フォーチュン』は最近、韓国は経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が強固であり、これまでの「新興市場」ではなく「先進新興市場」に分類されるべきだとの見解を示した。
同誌は韓国などの先進新興市場について、1990年代の経済危機でリストラを経験しており、リスクを抑えつつ、成長を維持する能力を備えたと評価している。
<「社会統合」が弱点>
しかし「先進新興市場」という評価は、先進国に比べると、「社会統合」、「環境」などの分野で遅れているということでもある。
韓国政府の経済・人文社会研究会が11月に発表した「経済・社会発展総合指標」によると、韓国はOECD(経済協力開発機構)加盟30カ国のなかで、「社会統合」では26位、「環境」では22位と下位にランクされていた。
調査の結果を見ると、総合順位で韓国は30カ国中21位だった。「成長動力」では14位だ。韓国は成長動力(経済)では先進国のレベルに到達したといえる。しかし、それ以外の2つでは下位にとどまっている。そのため総合評価では先進国の段階に至っていないという結論になる。
90年から07年までの一人当たりの国民所得は、6,147ドル(現在のレートで約55万円、以下同)から2万1,695ドル(約194万円)へと約3.5倍に増えたが、総合順位では同期間中ずっと21位あるいは22位から抜け出せていない。
韓国外国語大学経済学科のパク・ミョンホ教授は「韓国を除くOCED加盟国は、国民所得が増加すれば社会統合が進む傾向を示しているが、韓国だけが成長と社会統合が異なった方向へと進んでいる」と述べた。「2010年韓国」が立ち向かわなければならない大きな問題であることは間違いない。
ソウル大学社会福祉学科の安祥薫教授は「最近の韓国社会は中産層が崩壊し、貧困層が増加している。そのため生活の質を保障する社会資本を食いつぶしている」と指摘しているのも、そういう理由からだ。
(つづく)
【下川 正晴(しもかわ・まさはる)氏】
元毎日新聞ソウル支局長。現在、大分県立芸術文化短期大学教授(マスメディア論、現代韓国論)。
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