アメリカではアルバート・ゴア元副大統領のことを「カーボン・ビリオネアー」(炭素億万長者)と呼ぶ人が少なくない。『不都合な真実』と題する著作と映画で大成功を納め、環境関連ビジネスを次々と立ち上げた結果、今や資産100億円を超える大富豪になったためである。2009年には新著『われらの選択』と題する気候変動危機を解決するプランも発表。その中で、「地球環境問題の伝道師」とも呼ばれる同氏は「危機を乗り越えるには太陽光や風力発電に加え、原子力発電が欠かせない」と述べ、脱化石燃料社会に向けての行程表を明らかにしている。
ノーベル平和賞受賞者としては先輩にあたるゴア氏。そのアドバイスも受け、バラク・オバマ大統領は気候変動問題とアメリカの国内経済問題に同時に対処しようと、「グリーン・ニューディール政策」を打ち出した。この政策は「2050年までに温室効果ガスを8割削減。再生可能エネルギーの開発に1,500億ドルを投資。結果的に500万人のグリーン・カラー産業の雇用を生み出す」と言うものだ。
中でも代替エネルギー開発は、その目玉と位置付けられている。オバマ政権では全電力に占める太陽光や風力、地熱など再生可能エネルギーの比率を2012年までに10%、2025年までには25%に引き上げるという目標を掲げる。と同時に、中東など海外の石油に対する依存度を大幅に削減させる方針も打ち出した。
こうした動きと連動し、ゴア氏は様々な環境関連企業に対する投資を加速させている。中でも「シルバー・スプリング・ネットワークス」という会社に対する肩入れが注目を集めている。なぜなら、同社はオバマ政権が進めようとしている「スマートグリッド」(次世代双方向電線網)に欠かせないスマートメーターと呼ばれる機器そのものと、それを動かすためのソフトウエアーを製造販売しているからである。スマートメーター自体はすでに大手のGEなどが販売を始めているが、シルバー・スプリング・ネットワークスのソフトを組み込むとさらに効率が高くなると言われている。
【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。
ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。
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