<とは言え、やはりテレビは力がある>
―テレビのお仕事のことでは、この1年何か感じられたことはありますか。
小山 これまでずっとテレビの仕事をしてきて、ここ数年、「テレビはもうだめなんじゃないのかな」という意識が非常に強かったのですが、今年のなかごろから、『とは言え、やはりテレビは力があるな』と再認識した1年でもありました。
―テレビがだめ、というのはどういうところからですか。
小山 事業スキームとして、いろいろな点で独占状態でしたからね。広告料も高いし、社員の給与も高い。それが、他のメディアがさまざまなかたちで出てきたことによって、その歪み、独占であったゆえのテレビが持っていた錆のようなものが落ちるかたちになったと思うんです。スポットCMなどもどんどん減っていき、CMの価格も見直され、という状況でした。でも、それでいて数局は、昨年12月は一昨年よりも売上が上がったんですよね。
―昨年の中間ではどこも軒並み大きく下がりましたが…
小山 そうなんですが、12月は上がったんです。それは結局、媒体が増えすぎて効果も良くわからず、という状況のなかで、「それでもやっぱりテレビじゃないか」、と再認識したスポンサーが多かったらしいです。キー局のA社とB社は価格を下げ、C社とD社は安くしなかったそうなのですが、年末はまずA社とB社の枠が埋まり、それでもCM枠を買いたいという企業が、今までの値段でいいからということでC社とD社に戻って、結果的にはC社とD社の売上が上がったようですね。
【聞き手、文・構成:烏丸 哲人】
<プロフィール>小山薫堂【こやま・くんどう】氏
1964年、熊本県天草市(旧・本渡市)生まれ。放送作家、脚本家。N35Inc.代表、(株)オレンジ・アンド・パートナーズ代表取締役社長。『カノッサの屈辱』、『料理の鉄人』、『ニューデザインパラダイス』(フジテレビ)、『世界遺産』(TBS)など、斬新なテレビ番組を多く手掛けるほか、ラジオパーソナリティや金谷ホテル(栃木県日光市)顧問を務めるなど活動は多岐にわたる。著書に、『もったいない主義〜不景気だからアイデアが湧いてくる』、『考えないヒント〜アイデアはこうして生まれる』(以上、幻冬舎新書)、『人を喜ばせるということ〜だからサプライズがやめられない』(中公新書ラクレ)、『明日を変える近道』(PHP研究所)、『おくりびとオリジナルシナリオ』(小学館文庫)、『人生食堂100軒』(プレジデント社)ほか多数。初の映画脚本作『おくりびと』が第60回読売文学賞戯曲・シナリオ部門賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞獲得はじめ、国内外で評価を受ける。09年4月より東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科長に就任し、教鞭を取る。
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