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排出権取引ビジネスに群がる環境投資ファンドの思惑買い(2)
未来トレンド分析シリーズ
2010年1月 6日 11:00
国際未来科学研究所代表 浜田和幸

 ゴア氏は環境ビジネス専門のファンドに対する支援も加速させている。「クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤース(KPCB)」と呼ばれるベンチャーキャピタルがそれだ。ゴア氏は2007年11月に代替エネルギー投資担当のパートナーとして迎えられているのである。2004年にロンドンにおいて環境ファンドの「ジェネレーション・インベストメント・マネジメント(GIM)」を設立して以来、同氏は温暖化問題に積極的に取り組む企業への投資経験を積んできた。現在もGIMの会長として精力的に世界を飛び回っている。

 実は、ゴア氏がロンドンにGIMを設立したのにはわけがある。それは世界最大のエネルギー取引市場であるロンドン国際石油取引所(IPE)がGIM設立と同じ年から独自の排出権取引を開始したからである。排出権取引とは国家や企業ごとに温室効果ガスの排出枠を定め、排出額が余った国や企業がその余剰分を排出権として市場に売り出し、排出枠を超えて排出してしまった国や企業がそれを買ってペナルティーを相殺する仕組みである。

 現在こうした排出権取引はロンドンとシカゴを2大中心地として行われている。シカゴには古くから農作物や鉱物、エネルギー資源などを取り扱う世界最大の商品取引所があった。その歴史と伝統を引き継いで、設立されたのがシカゴ気候取引所(CCX)である。IPEとCCXはともに「インターコンチネンタル取引所(ICE)」というアメリカとイギリスにまたがる企業の子会社である。ICEはアメリカのゴールドマン・サックスなどの出資を受け、まずシカゴに気候取引所を作りその後、ロンドンにも進出している。

 ちなみにゴア氏がGIMを設立した際、その理事長として送りこんだデイビッド・ブラッドという人物はゴールドマン・サックスの出身である。そのため、環境投資ファンドの業界ではGIMは通称「ブラッド・アンド・ゴア」で通っている。ところで、排出権取引の2大中心地アメリカとイギリスは世界に金融危機をもたらした2大中心地と重なる。

 すなわち今後はシカゴとロンドンが手を携え、排出権取引で第二のウォール街となる可能性が高いと言えそうだ。現在アメリカとEUは排出権取引においては異なる制度を取っているが、これを統一すべきである、とゴア氏は盛んに唱えている。


(つづく)

【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
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 国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。

 ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
 なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
 テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
 その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
 また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。

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