「今日(昨年12月30日)でお店を閉めます。お世話になりました」。
帰省車中に届いたメール。2009年の中洲取材は、小生が昨年末に取材したキャバクラ店からの閉店通知で幕を閉じた。客の入りが良くなる年末まで営業を引っ張って、店じまい。よく耳にするケースである。今思えば、クリスマスでも貸し切り状態、ちょっとしたハーレム感覚で酒が飲めるぐらいヒマな店だった。「まさか」というより「やはり」である。
昨年末に引き続き、中洲をレポートすることにした。前出の閉店メールに限ったことではない。不況の真っ只なかにある、我が「愛すべき街」は、今も悲鳴をあげ続けているのだ。黙って見過ごすわけにはいかない。
さて、閉店寸前の店でもなんとか営業を続けようとする12月は、客が増える書き入れ時のひとつ。逆に、「(売上的に)最も寒い」と、飲食店および風俗店の経営者たちが口を揃えて言うのが2月だ。年末年始の商戦後、そして、気温も下がり、人々が出不精になりがちな同月は、店の経営状況もグンと冷え込む。
そんな身もフトコロも冷え込む同月において、新たな試みが行なわれようとしている。福岡市とタクシー協会が連携して行なう「客待ちタクシー対策」だ。
中洲近辺の国体道路に、タクシーがズラリ。もはや見慣れた感のある夜の光景だが、これをなくそうと対策が考えられた。福岡市中央区春吉3丁目にあるパチンコ店の立体駐車場を借り、22時から翌2時までタクシー待機場所にするという。
「今でさえ客がいないのに、2月にやるなんてワケがわからんですよ。順番待ちになって無駄に時間をつぶすぐらいなら、ダメ元でも流しをやるしかないですな」。
毎夜、中洲で客待ちをしているタクシー運転手は、そうボヤいていた。「流し」とは、路上停車で客を待たず、走行しながら客を拾う営業スタイルのこと。隔離の上、「軟禁」される中洲を避けようとする動きがあるかもしれない。
「タクシー行列をなくそうなんて、もう3度目ぐらいでしょ。前も失敗していたけど、今度は大丈夫かしら。大体、乗る人がいないのに、タクシーをどっかへ押し込めようなんて、『臭いモノにはフタをしろ』みたいな話ですよね」と、冷ややかな目で見る中洲スナックのママさんもいる。今回の試みがどのような結果を生むかは現時点では推測し難い。ただ、本業の営業時間外に有料で駐車場を貸すパチンコ店が、得をすることだけは間違いないだろう。
(つづく)
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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