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特別取材

ハッピーという名の「企画構想学」~小山薫堂氏(3)
特別取材
2010年1月 7日 08:00

<企画は、意識よりも「体質」>

 ―昨年2月のアカデミー賞受賞後、小山さんのお名前がさらに広まって、仕事の幅も広がられたのではないでしょうか。

 小山 というよりも、大学(東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科)の講義が昨年4月から始まったことの方が大きいですね。

 ―大学にはどのくらいの頻度で行かれているのですか。

 小山 月に2回ぐらいです。あとはうちのスタッフが週に1回のスパンで講義に行っています。立ち上がったばかりですから、まだ全員が1年生なのですが。
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 ―「企画を学ぶ」ということですが。

 小山 しかしこれが、本当に難しいんですよね、企画を教えるというはものすごく難しくて、結局、スポーツのようにフォームがあるわけではないですし、これをやったら必ずこうなる、というものでもありません。例えるならば、作曲家を育てるようなものでしょうね。それはもう、自分のなかにあるものを外部とどう融合させて作品やアイデアを生み出すか、ということしかありませんので、本当に教えにくいんです。ですから、「教える」というよりは、僕と同じ時間をなるべく共有することによって、刺激を受けて、自分のなかの種を発芽させていく、という感じです。

 ―確かに、企画や発想方法を教える、伝える、というのはかなり難しそうですね。

 小山 そうなんですよね。教えることで、意識は少し変わるかもしれませんが、意識が変わるだけではなかなか企画に結びつかないですから。僕は、意識というよりも「体質」だと思うんです。僕はいつも『アイデア体質』というのが重要だなあと思っていまして、何を見るにつけても、常に「自分のアイデアの種にしよう」という気分が起こらないと。意識してやっているようでは多分だめなんです。

 ―そういう学校が九州にもあれば、と思います。

 小山 九州でやったら受けそうですよね。九州の人の体質に合っていると思うんです。それから最近、とくに感じるのですが、例えばアイデアを出す人をピッチャーだとすると、それを受け止めるキャッチャーの存在がすごく大切だなと思っているんです。キャッチャーがつまらなそうに球を受けるのと、たとえボール球でも、「うわぁ、今のはストライクじゃなかったけどすごい速球だった!」って言ってあげるのとでは、そのあと投げる球も、投げる気分も変わるじゃないですか。そこがものすごく重要だなと最近実感します。人のアイデアを否定することなく受け止めてくれて、気分を盛り上げてくれる、そういう「受け上手」な人が、会社や周囲にいるといいなあと思いますね。

(つづく)

【聞き手、文・構成:烏丸 哲人】


<プロフィール>小山薫堂【こやま・くんどう】氏
 1964年、熊本県天草市(旧・本渡市)生まれ。放送作家、脚本家。N35Inc.代表、(株)オレンジ・アンド・パートナーズ代表取締役社長。『カノッサの屈辱』、『料理の鉄人』、『ニューデザインパラダイス』(フジテレビ)、『世界遺産』(TBS)など、斬新なテレビ番組を多く手掛けるほか、ラジオパーソナリティや金谷ホテル(栃木県日光市)顧問を務めるなど活動は多岐にわたる。著書に、『もったいない主義〜不景気だからアイデアが湧いてくる』、『考えないヒント〜アイデアはこうして生まれる』(以上、幻冬舎新書)、『人を喜ばせるということ〜だからサプライズがやめられない』(中公新書ラクレ)、『明日を変える近道』(PHP研究所)、『おくりびとオリジナルシナリオ』(小学館文庫)、『人生食堂100軒』(プレジデント社)ほか多数。初の映画脚本作『おくりびと』が第60回読売文学賞戯曲・シナリオ部門賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞獲得はじめ、国内外で評価を受ける。09年4月より東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科長に就任し、教鞭を取る。


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