この両社の提携の本質は、金融機関のデベロッパーに対する姿勢が背景にある。サブプライムローン問題以降、各金融機関のデベロッパーに対する融資姿勢は非常に厳しくなっている。その状況はデベロッパーだけでなく、その仕事を請負うゼネコンに対してもおよぶほどだ。
あるゼネコンが、マンション工事を受注して金融機関に相談した。すると「マンション工事なら工事見合いの融資はできない。受注するなら単独で資金を作ってください」とにべもなく断られたという。デベロッパーの破綻や販売計画の狂いによって、ゼネコンの回収遅れや物件を引き取りなどで内容が悪化することを恐れ、融資を断っているのだ。
これが、半年や1年の融資期間ならば別であろう。しかし新規物件の場合、2年は期間がかかる。この2年でどう体制が変わるか不安なため、マンションの融資には慎重な姿勢を崩さないのだ。しかも、購入先がファンドや投資案件ならば、なおさらである。
シノケンの場合、ファンドなどへの売却計画では金融機関が納得しない。かといって、購入するような一般投資家やデベロッパーも少ない。一方のえんも、自社開発では資金が2~3年は固定化するし、金融機関も厳しい姿勢を崩さない。そのため、事前に開発主を探して完成物件を買い取る方向を取っているが、安定した開発案件は願ってもないことであった。
金融機関が以前のように融資を実行する可能性は低い。ならば、この両社のようにお互いの利害が一致するようなタッグを組むことが、デベロッパーの生き残り策のひとつでもある。
(了)
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