ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

未来トレンド分析シリーズ

排出権取引ビジネスに群がる環境投資ファンドの思惑買い(3)
未来トレンド分析シリーズ
2010年1月 7日 11:00
国際未来科学研究所代表 浜田和幸

 その主張のとおり、排出権取引のシステムが世界規模で統合されれば、排出権クレジットが新たな国際通貨に衣替えすることも十分考えられる。そうでなくても今や排出権は一つの金融商品となっている。排出権取引にも現物、先物、オプションがあるのだ。ホワイトハウスの見積もりによれば、この市場は今後8年以内に6,500億ドルの規模に発展するとのこと。

 しかし、市場関係者の間ではそれより遙かに大きな2兆ドル近くに成長するとの期待も出てきている。近い将来、こうした取引がデリバティブとして発展すれば、「100年に1度と言われる金融危機」で大きく傷ついた先進国の経済も一挙に息を吹き返すことができるかもしれない。

 我が国においては京都議定書の枠組みは存在するものの排出権取引に関する「キャップ・アンド・トレード」の制度は確立していない。鳩山政権では温室効果ガスの排出枠を各企業に割り当て、過不足分の売買を認める新たな制度作りに着手したところである。国連の環境サミットで「2020年の温室効果ガスを1990年比で25%削減する」と国際公約した鳩山首相。日本版「キャップ・アンド・トレード」は、そうした目標を達成する上で欠かせない切り札と考えられている。

 要は、まず具体的な温室効果ガスの削減目標を定め、その達成のために排出量に上限(キャップ)を定める。その上で各企業などに排出枠を配分し、実際の排出量との差額分を取引(トレード)するというものである。関係省庁の協力も得ながら、民主党は副大臣級の検討チームを立ち上げ、2010年の通常国会での法制化を目指している。新たな法制度の導入となるわけで、金融商品取引法や銀行法などの改正も必要になる。最終的な法整備までには紆余曲折があろうが、大きな方向性は明らかになりつつある。

(つづく)

【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
090702_hamada.jpg
 国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。

 ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
 なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
 テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
 その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
 また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。

【最新刊】



*記事へのご意見はこちら


※記事へのご意見はこちら

未来トレンド分析シリーズ一覧
未来トレンド分析シリーズ
2012年12月 1日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年11月30日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年11月29日 15:04
未来トレンド分析シリーズ
2012年8月18日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年8月17日 10:27
未来トレンド分析シリーズ
2012年8月16日 16:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年6月13日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年6月12日 15:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年3月21日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年3月19日 10:42
未来トレンド分析シリーズ
2012年2月29日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年2月28日 16:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年2月27日 16:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年2月24日 16:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年1月12日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年1月11日 07:00
未来トレンド分析シリーズ
2012年1月10日 12:03
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル