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特別取材

ハッピーという名の「企画構想学」~小山薫堂氏(4)
特別取材
2010年1月 8日 08:00

<「偶然」を作り出す能力>

 ―小山さんはよく、「偶然力」ということを言われますね。

 小山 最近の例で言いますと、『おくりびと』を手掛けたときに、それまで山形には行ったこともなかったのに、急に「大学で講義をやってくれ」とか、山形でケーブルテレビをやっている人から「映画祭をやるので審査員を手伝ってほしい」とか依頼が来るんです。別にみんなが横でつながっているわけではないのに、本当に偶然に、山形でのお仕事が増えました。「一体これは何なんだろう?」と思いましたけれども…
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 ―それは、何だったのですか?

 小山 それは、ひとつにはまず「大きく意識するかどうか」ということがあると思います。私の秘書は、昔、パン屋さんになりたかったというので『パン子』というあだ名なのですが、昨年いっぱいで退社するということで、彼女のためにサプライズを仕掛けたんです。それは、僕が昔から何となくやってみたかったいたずらで、街中には、ハンコ屋の看板がたくさんあるじゃないですか。そこで、丸い輪を作って棒を刺して、早朝の東京を回って、ひとつひとつの看板を『パンコ屋』に変えていくというものです。その様子をビデオに収め、編集して番組風にして見せる、というのをやったわけですよ。たったそれだけのくだらないことなのですが、でもそれ以来、街を歩いていると、ハンコ屋ってこんなにたくさんあったのか、と気づくようになりました。つまり、偶然にハンコ屋の看板を見つけるのではなく、それに気づくようになったわけです。「偶然力」というのは、今まで何となくスルーしていたものや見落としがちだったものを、キャッチできる力、それに気づける力が生み出すのかなぁ、と思うんですね。

 ―それを先ほどの山形の話を重ねると、意識していなかったところに意識が行くようになった、ということですか。

 小山 たぶんこれまでも、急にどこかのエリアと仲良くなったことは何度かあったと思うのですが、今回は「おっ、また山形か。じゃあやる!」という気分になりました。それまでは「ん?岐阜?いいや別に、行けるわけないじゃん」などと言って断るようなこともあったと思うんです。  偶然を作り出す能力というのは本当に、自分のなかに眠っているものを呼び起こせるかどうか、というところが大きいのではないでしょうか。

(つづく)

【聞き手、文・構成:烏丸 哲人】


<プロフィール>小山薫堂【こやま・くんどう】氏
 1964年、熊本県天草市(旧・本渡市)生まれ。放送作家、脚本家。N35Inc.代表、(株)オレンジ・アンド・パートナーズ代表取締役社長。『カノッサの屈辱』、『料理の鉄人』、『ニューデザインパラダイス』(フジテレビ)、『世界遺産』(TBS)など、斬新なテレビ番組を多く手掛けるほか、ラジオパーソナリティや金谷ホテル(栃木県日光市)顧問を務めるなど活動は多岐にわたる。著書に、『もったいない主義〜不景気だからアイデアが湧いてくる』、『考えないヒント〜アイデアはこうして生まれる』(以上、幻冬舎新書)、『人を喜ばせるということ〜だからサプライズがやめられない』(中公新書ラクレ)、『明日を変える近道』(PHP研究所)、『おくりびとオリジナルシナリオ』(小学館文庫)、『人生食堂100軒』(プレジデント社)ほか多数。初の映画脚本作『おくりびと』が第60回読売文学賞戯曲・シナリオ部門賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞獲得はじめ、国内外で評価を受ける。09年4月より東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科長に就任し、教鞭を取る。


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