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特別取材

ハッピーという名の「企画構想学」~小山薫堂氏(5)
特別取材
2010年1月 9日 08:00

<「人は知らず知らずのうちに最良の人生を選択している」>

 ―小山さんの著書『考えないヒント』のなかで、「神様にフェイントをかける」という項がありますね。思いがけない行動を取ることで、何かが絶対に生まれる、という内容です。しかし、それが感覚的に分かっていても、なかなかそうやって踏み出せない人も多いと思うのですが。
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 小山 僕は結構冷めているところもあって、自分の人生を客観的に見ることがよくあるんですね。今も、もう締め切りを1カ月ぐらい過ぎていて、チケットもすでにソールドアウト、今年5月には始まりますよ、っていう舞台の原稿を、まだ一行も書いていないんですね(笑)。ドラマで言うならば、崖っぷちに立たされた絶体絶命のピンチ。そんなとき、「この人、どうするんだろうな…」と、もう一人の自分が自分を見ているような感覚になるんです。このあと、どんな行動に出るんだろうという、自分の生き様を自分で見ているような、そういう感覚です。そのときに、じゃあ土壇場で、今日の一晩のうちにやりあげたらカッコいいよな、と、今度は本当の自分が考えるんです。少々二重人格のようなところがあるかもしれませんね。踏み出せない自分を見ている、もう一人の自分がいて「これを踏み出したら、すごく何か面白いことが起こるのに」、「ほら、今やったら面白いよ、おいしいよ」と言わせているようなところはあるかもしれません。
 あと、よく僕が言うのは、自分の人生を振り返ったときに「人は知らず知らずのうちに最良の人生を選択している」ということです。例え大切な友人が死んだとしても、そのときは大変で、辛くて、号泣するけれども、2、3年も経てば「あいつバカだったよね」と言えるようになるとか、あるじゃないですか。つまり、未来から考える、未来から見てみる。そうすると、今という時間、ここという場所に自分が立たされているのは、たいしたことではないんだな、通過点のひとつに過ぎないんだな、と思える。そうしたら、いろいろやってみたほうが、うまく行こうが、失敗しようが、面白いはずだという気になるんじゃないかと思います。

 ―それは、視点そのものの大きな「改革」ですね。

 小山 いつも良く考えることなのですが、そういう視点って、むしろうまくいかなかったときのほうにメリットがあるような気がするんです。宝くじ当たらなかったら、「よかった、ここで当たっていたら、アブク銭を手にした自分が車を買って、その車で事故って死んでいたかもしれない、はずれてよかったなぁ」とか、「もしこの番組が当たっていたら、きっとそのことで調子に乗って、この番組に出ているおねえちゃんとデキちゃったりして、それが写真週刊誌に撮られたりして大変なことになっていたんだろうな」とか、勝手に妄想したりしますよ(笑)

(つづく)

【聞き手、文・構成:烏丸 哲人】


<プロフィール>小山薫堂【こやま・くんどう】氏
 1964年、熊本県天草市(旧・本渡市)生まれ。放送作家、脚本家。N35Inc.代表、(株)オレンジ・アンド・パートナーズ代表取締役社長。『カノッサの屈辱』、『料理の鉄人』、『ニューデザインパラダイス』(フジテレビ)、『世界遺産』(TBS)など、斬新なテレビ番組を多く手掛けるほか、ラジオパーソナリティや金谷ホテル(栃木県日光市)顧問を務めるなど活動は多岐にわたる。著書に、『もったいない主義〜不景気だからアイデアが湧いてくる』、『考えないヒント〜アイデアはこうして生まれる』(以上、幻冬舎新書)、『人を喜ばせるということ〜だからサプライズがやめられない』(中公新書ラクレ)、『明日を変える近道』(PHP研究所)、『おくりびとオリジナルシナリオ』(小学館文庫)、『人生食堂100軒』(プレジデント社)ほか多数。初の映画脚本作『おくりびと』が第60回読売文学賞戯曲・シナリオ部門賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞獲得はじめ、国内外で評価を受ける。09年4月より東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科長に就任し、教鞭を取る。


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