昨年、「福岡県町村会」(会長:山本文男・添田町長)をめぐる詐欺事件が県幹部への接待疑惑へと発展。麻生渡知事の右腕と言われた中島孝之副知事が引責辞任する事態となった。県幹部や町村会参事らが遊興に費やした金の原資は、町村会や同会が事務を兼任していた「福岡県市町村振興協会」から支出されていたとされる。すべてが公金であったことはまぎれもない事実である。なぜ不正をチェックできなかったのだろう。
昭和54年に設立された「財団法人 福岡県市長村振興協会」は、県から交付される宝くじの収益などを主たる財源に、市町村振興事業を行う団体である。事業内容は、災害などの緊急時における市町村への貸付をはじめ、防災・行政情報通信ネットワーク整備事業への助成、高齢者福祉増進事業への助成、青少年健全育成事業の実施など多岐にわたる。「福岡県市町村要覧」の出版や、AED(自動体外式除細動器)の配布なども行っており、年間予算は、一般会計と基金特別会計を合わせて50億円を超える。
理事長は町村会の会長でもある山本文男添田町長で、県内各自治体の首長らが理事を務める。もちろん「監事」も3名選任されており、いずれも現職の市長・町長だ。実際の会計監査がどのように行われていたのか判然としないが、接待疑惑を引き起こした経緯から見て、杜撰であったことは明らかである。
同会の平成19年度の決算資料を確認したところ、支出項目の中に「交際費」として「100,000」と記されている(画像参照)。しかもこの年は、予算の10万円さえ支出されなかったことになっている。だが、伝えられる遊興費の額はこんなものではい。
報道されているとおり、県関係者などのマージャンや旅行に同協会の公金が費消されていたとすれば、会計監査の折、帳簿や領収書などから不正の一端がつかめていた可能性が高い。県幹部などの旅行が分かっていれば、不適切であることは一目瞭然。支出を偽装していても、物品台帳などと照合すれば、事実関係が把握できていたのではないか。いずれにせよ、監査がおざなりであったことは否めない。
町村会、市長村振興協会、ともに公金を財源とする団体である。運用するのは職員だが、理事などの要職に就いていた自治体首長には、支出について厳しくチェックする義務があったはずだ。「見逃した」「知らなかった」では済まないということを肝に銘じるべきだろう。
※記事へのご意見はこちら