<収益物件を求める>
新栄住宅の木庭社長は、10年前から賃貸管理会社のM&Aを検討はしていたが、マンション分譲事業が順調にきていたため、あまり主眼に置いてはこなかった。
しかしここにきて、在庫一掃のためにキャッシュバックを余儀なくされた「ビジネスモデル」に、大いに疑問の念が湧くようになってきた。東京の不動産コンサルが「マンション分譲主体の業者は半減する」との指摘に対して大いに危機感を抱き、納得もした。その一方では、コンサルから「収益物件を買うチャンスが到来した。14~15%の収益物件が続々と出る」との“神託”に共鳴して早速、行動に踏み切った。
同社が、「アンピールが駐車場経営を始めました!!」という触れ込みを流していた。熊本の中心部にある「ライオンパーキング」を購入、「上通り」のバス停まで徒歩1分、200台収容の大型駐車場だ。購入価格は10億円で、最低賃収入が年間1億円見込まれる。自己資金3億円、福岡銀行7億円で賄った。借入7億円対して、最低14%の収益率になる。同社サイドも、この駐車場を取得するまでの情報収集には余念がなかった。当初の価格は20億円だったのである。
駐車場ばかりでなく、賃貸のファミリー・ワンルーム、オフィスの物件を買い求めた。買い求めるためにはまさしく情報戦争を勝ち抜かなければならない。普通ならば、リストラしつつ業態チェンジをすることは至難の業である。だが同社の場合は、福銀の「物件購入資金枠70億」のお墨付きを得ている。だから柔軟な対応ができるのだ。「15%の収益率確保と、自己資金30%」を前提にして商い交渉が可能なのである。
<不動産情報ビジネスに業態チェンジ>
新栄住宅の09年9月期における家賃収入は2億2,500万円であったが、今期(2010年9月期)は熊本の駐車場収入を含めると4億円を見込んでいる。業績の見通しとしては、41億6,400万円に対して経常利益4億2,900万円を見込んでいるのだ。まさにV字回復達成に『王手』をかけた様相を呈する勢いである。ただ、V字回復の数字の裏側では、大胆な業態チェンジも進行している。
マンション分譲部門では年間供給200戸体制戦略を設定しているが、手持ちの商品土地にいかなる企画をなすかについては慎重である。既存の発想を打破するために、徹底的なリサーチを行なっている。「もう馬鹿な値引き戦争に巻き込まれたくない」という苦い経験を教訓化することに躍起だ。他業者なら、「在庫がなくなったからまた仕込まなければならない」という自転車操業の繰り返しになる。ここが新栄住宅の余裕のあるところだ。
同社の業態チェンジの方向性としては、賃収入物件を増やすこと、賃貸管理物件を増大させることを柱にして、不動産情報ビジネスの分野に注力していく意向である。同社の近藤本部長に言わせると、「賃貸管理情報サービスのビジネスでも、素晴らしい会社がたくさんある」となる。要は、不動産周辺事業を深掘りしていく戦略を模索しているのであろう。同社の場合、「激変時代には、過去の本業の周辺事業を掘り下げ」がキーワードのようだ。
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