福岡市内の港湾関連工事を円滑に行うためには、福岡市漁協の協力が必須条件となる。08年10月に九州地方整備局(以下、九地整)が発注した「博多湾(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事(第2次)」が、同漁協の「博多湾漁業権管理委員会」によって工事中止に追い込まれたのが分かりやすい例である。結局、工事再開まで約1年かかった上、見返りに約1億円の浮泥除去工事を発注するなど、九地整側は大きな犠牲を払わされることになる。
問題は、工事を止めた福岡市漁協側の「博多湾漁業権管理委員会」が、特定の地場マリコンと極めて親密な関係を築いていることである。同委員会の委員長は福岡市漁協箱崎支所のトップである運営委員会会長。市漁協内の実力者とされる。
福岡市中央区に本社を置く地場マリコン「博多港管理」は、土木や浚渫などを行う子会社「コンドー」を抱える。「コンドー」は「博多港管理」の本社ビルの裏にある第二博多港管理ビルに本店を置き、博多港管理と同社の創業者(現在は相談役)が全株式を保有しているとされる。
「コンドー」の役員構成を確認したところ、前述の「博多湾漁業権管理委員会」の委員長(市漁協箱崎支所・運営委員会会長)が取締役に就いており、さらには市漁協の組合長の身内も取締役に名を連ねる。
問題は、「稚魚が死ぬ」との理由で「博多湾(須崎ふ頭地区)泊地(-12m)浚渫工事(第2次)」の着工を止めた博多湾漁業権管理委員会の委員長が、同工事を受注した地場マリコン「宮川建設」(福岡市中央区)のライバル会社「博多港管理」の完全子会社に籍を置いていることだ。
もう一度、工事を止められた九州地方整備局と市漁協側の交渉記録を確認するが、漁協側の博多湾漁業権管理委員会が九州地方整備局に呼び出しをかけ、工事中止を申し入れたのは、宮川建設と淺川組九州営業所(北九州市小倉南区)で構成される「宮川・淺川経常建設共同企業体」が施工業者に決まってからである。
管理委員会側は、工事の実施を知っていながら、落札業者が決まってから抗議行動に入っている。つまり、落札したのが意中の企業ではなかったからと考えるのが自然なのだ。そして、同工事の入札で事実上の失格となったのが「博多港管理」だったのである。
つづく
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