今年に入って10日もしないうちに、生コンクリート工場の破綻が出た。
鳥取市内の鳥取生コン(株)が1月8日に、同社従業員側が鳥取地裁へ破産手続開始を申請した。2009年3月期の業績は3億1,500万円、金融債務23億円超。尋常ではない多大な負債を抱えていた。なお昨年12月、同社グループ会社が破産手続開始決定を受けている。今後は同社従業員によって設立された新会社「鳥取生コンクリート」に同社の営業を譲渡して継続させる。
同社の代表が理事長を務める社会福祉法人による、12月に破綻したグループ会社への資金不正流用が発覚。同社が社会的責任を問われた場合、現体制での営業は不可能と判断し、現経営陣との関係を絶ったうえで再生を図ったと新会社側は表明している。さらに、「雇用の確保を最優先に考えた末の決断であった」と、同地区内の生コン関係者のコメント。ちなみに、破綻した鳥取生コン(株)代表の子息は、鳥取県議を務めている。
売上高が3億円強で金融債務が23億円。代表の不正などイレギュラーなケースが重なった破綻ではあるが、新年早々、生コン業界の破綻をお知らせすることとなった。これは、今後生コン業界が“淘汰”されていく予兆ではなかろうか。
生コン工場は現況1工場あたり平均年商3~5億円、経常利益率1~2%、損益分岐点比率が95%超と、財務面で非常に過酷な状況であることは否めない。協同組合員であるならば、共販システムによって取引先の破綻で焦げ付きが発生し、それが致命傷となって連鎖倒産するケースはほとんど考えられない。しかし、95%という業界平均の損益分岐点比率で、売上高減少が加速するなか、そのような状況に耐えることができるのか、疑問符がつく。製造コストは年々上昇するという待ったなしの状態。過酷な財務状況にさらに拍車がかかり、生コン業界が潤っていた時代に蓄えた資産を食い潰す。その資産も、底をつき始めているという。赤字の垂れ流しを続けなければならなくなる。赤字とわかっていて経営を続けることが、生コン業界、そして地域社会のためになるだろうか?
1990年度、ピーク時の全国出荷量1億9,799m3が再び発生することは今後ないだろう。生コン業界は地域密着。大激変時代に存亡を賭けた戦いを挑むには、業界・地区そして地域という範疇で生き残り、経営の健全化へ本気で取り組む同志となれるかどうかであろう。
【河原 清明】
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