<健全な「糸島型の生きがい」を創出>
―雇用状況についてはどういう見方をされていますか?
さとう 雇用は、地域興しの根本に関わる問題です。しかしながら今後、「雇用を増やして歳入を増やす」というかたちは考えにくい。以前のように、年収が年齢とともに増えていくということは期待できません。
若い世代で年収が300万で頭打ちになるとして、仮に500万が目標とするならば、足りない200万をどうするか。300万のなかから支出している住居費や食費などの生活費で、地域でカバーしていくことができれば、以前の幸せ度とは変わらなくなると思います。
一方、シニアの方々で、年金生活が厳しくともまだ働けるというのであれば、元気なうちに医療や介護の施設でボランティアをする。そして、自分が介護や医療を受けるときに働いた分だけ戻ってくる。お金は増えなくても「確かな安心」が増える政策を打っていかなければなりません。
糸島市では、早期退職者や元気な高齢者は増えていきます。そういう方々を地域でどう活かしていくか。それは必ずしも雇用というところではない。生きがいというところで社会が豊かになっていければいいと考えています。
また現在、糸島から1日に2万人が福岡へ通勤しています。私は、福岡で雇用が増えるならば、糸島はベッドタウンと考える市民がいても構わないと思っています。
世代別に見て、何が重要なのかを見極めていかなければなりません。「糸島型の生きがい」や「糸島型の雇用創出」というものがあるはずです。
―前原リサーチパークの問題についてはどう考えていますか?
さとう 根本の思想がおかしいと思っています。「九州大学に関連づける」という大義名分はありそうに見えるけれども、実際に来ている企業は大学と関係がない。ならば、費用をかけて何のためにやったのか。インフラ整備にかけた費用なども本当にペイされると思ってやったのか。考え方そのものがおかしい。産業廃棄物が埋まっているという疑惑についても、不純な動機が生んだ不純な結果だと思います。工業団地を作ること自体が、糸島のありようから考えるとおかしいのです。
企業誘致においても、糸島にふさわしい、第一次産業に関連した企業ならば、誘致の意味があると思います。
【文・構成:県政取材班】
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