<大きな可能性を行政が活かす>
―糸島の観光事業についてはどう考えていますか?
さとう 二丈、志摩を含めて大きな可能性があります。しかし現在、そのほとんどが民間主導というかたちで行なわれています。行政はほとんど何もしてこなかった。行政は観光事業の将来性にすら着目していなかった。福岡からは日帰り圏内にあるわけですから、多くの人を集められる可能性が高いのです。
たとえば、マラソンや自転車、ハングライダーなど、自然とつきあうかたちのスポーツにおいて、糸島は人気スポットになり得ます。最近では、「糸島でラジコングライダーの世界大会を開きたい」という要望がありました。そういったイベントも観光に取り込めます。
文化行事で言えば、2,000人のコンサートホールを作るのではなく、演目の雰囲気にあった場所を活かすべきです。そういう場所が糸島にはたくさんあります。1カ所に大人数を集めるよりも、たとえば『糸島・秋のコンサート』として、10カ所でやればいいのです。
夏の『サンセットライブ』では多くの人を集めていますが、民間の方々が円滑に行なえるように、行政は柔軟な対応をしていかなければなりません。
―そういうイベントは、NPOや市民団体へ任せるという流れがあると思いますが。
さとう イベントを主催する人たちが動きやすい下地を、行政が作ることは大事です。公共施設や用地の使用許可、交通規制などで、主催者がやりやすいように積極的に関わっていくようにしたい。また、行政が先頭に立って、主催者側と交渉を行なうようにもしたいと考えています。たとえば、市を挙げて大々的なキャンペーンを打つとかですね。
―九州大学との連携という意味も含め、教育についてはどう考えていますか?
さとう 今までの市政が行なっていた出前授業は、実際には受け入れる先生たちに負担を与えたといった話も聞いています。また、九州大学の知的ノウハウを産業に活かすために企業団地を作るということは、将来的には必要かもしれない。それ以前に、数千人の学生がいる事実に注目しなければいけない。たとえば、つい最近、地元のお母さんたちが手作りのお弁当を大学に売りに行きました。それがすごく評判が良いのです。
せっかく食の宝庫である糸島に大学があるのに、なぜ地元の美味しいものを学生に食べさせないのか。地元と連携しながら、「九州大学に通った4年間で、そこで食べた昼食が一番美味しかった」と思わせないと。そういうつながりを持つことが教育機関と地元の連携において、最も大事にするべきだと考えています。
九州大学の学生は、バイト先がないといった理由で、福岡市の西新や姪浜に住んで大学へ通っています。とても望ましい姿だとは思えない。もっと学生たちが糸島のコミュニティと密着していかないと。地域のイベントに参加する。あるいは、時間が空いている時は、農作物の収穫を手伝って地元の人々と触れあう。そういうレベルで、自治体と大学側は考えるべきです。言うなれば、九大生の「第2の故郷」となれるように。
また、糸島ほど熱心に「食育」をすすめられる地域はありません。海のものも山のものも、ブランドものの野菜もあるわけですから。私は、食育が教育の根幹であると思います。
【文・構成:県政取材班】
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