<地域・家族の再生産へ>
松本 地域の課題で一番急を要するのは、自然災害に対する対応です。旧前原市では7月に起きたゲリラ豪雨で犠牲者も出ました。そういった自然災害は常態化すると考えています。私どもの地域には、独居老人が2,000人います。新聞発表では、高齢者世帯まであわせると、20年後にはその倍になるだろうといわれています。いざ災害になった時に、誰がそれを見守るのか。誰がお助けするのか。市役所職員だけでは間に合いませんから、いい意味での「向こう3軒両隣」の心が復活させられればと思っています。とくに独居老人は、家のなかで倒れてしまうと、家族がいなければ誰もわからないという危険性がありますので、地域で助け合うことが必要になるわけです。
旧前原市で、30年ぐらい前に300戸で街開きした地域があったのですが、当初は7~8%の老齢化率だったのですが、今は3割を越えています。子どもはみんな出て行ってしまって、育てた親しか残っていない。だから、高齢化率はどんどん高くなっていくわけですね。「家族の再生産」といっているのですが、子どもも孫も、この町で生活していく仕組みを作らないとまちは寂れていくわけですね。高齢化社会を恐れないまちをつくるためには、地域の再生産、家族の再生産――ここで生まれ育った子や孫がここにとどまることができる環境にしなければならないのですが、現実には就職・学校の都合で、子や孫が出ていってしまう。サラリーマンが通勤可能なエリアに勤めることのできる場所がもっとあれば、と思います。
―糸島市だけで雇用を作っていくようなまちづくりを目指しておられるのですね。先ほどの3大プロジェクトをみると、まちづくりというよりは人づくりを進めていかれているように見受けられますが。
松本 現在、ダイハツの500人規模の研究所ができる計画があります。九大生をメインに雇用すると見られるのですが、完成すればここで育った学生が研究員として就職できるようになります。それだけでなく、付随して研究の補助や事務員、清掃など、さまざまな方が働けるような場所ができます。それが私の思う、理想的な糸島市の雇用形態です。
前原インターの近くに、県が整備をしている団地があるのですが、カナダにしかなかった水素関連部品の試験研究施設ができました。すると、国内の関連企業はここに試験にくるわけです。今度は半導体の実験施設ができ、関連する企業の集積が可能となります。技術者から一般のサラリーマン、お年寄りまでできるような仕事など、地域経済を潤すような秩序ある政策を展開できれば、素晴らしいまちになるという希望をもっています。
【文・構成:県政取材班】
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