雪が降り積もり、一時は交通機関がマヒした1月13日、14日の2日間、中洲の夜は一段と冷え込んだ。ただでさえ客足が少なくなっているお寒い状況にもかかわらず、さらに客足を遠のかせる冬将軍の到来。実際に中洲を見回ってみたが行き交う人々はまばらだった。
「こんなに雪がひどくて寒い時に、わざわざ遊びに行くことはない――」たいていの人はそう考えていただろう。
実は、男の遊びに精通している、いわゆる"マニア"にとっては常識なのだが、ヒマが予想される時こそ「チャンス」なのである。中洲にある飲み屋や風俗店は、定休日以外は、よほどのことがない限り開いている。よほどのこと、とは、停電、浸水など営業に支障をきたす自然災害、もしくは営業停止などの法的処分である。
また、働く女の子の方は、その人気に比例して出勤率が高くなっている。出勤に対して真面目な子が、接客の質も高いのは言わずもがなのこと。雨も雪も降っていない普通の日なら予約は必須。さもなければ、極端に長い待ち時間を過ごすことになる。
つまり、何らかの理由で客足が遠のいている時こそ、人気の女の子とゆっくり遊べるチャンスなのである。逆の見方をすれば、どんなに店が忙しくても、待ち時間なしで遊べる女の子には気をつけた方がいい、と言われている。
「大雪(大雨)の影響で、九州自動車道は通行止め、市内でも市営バスが運行を見合わせています」。仮にそんなニュースが流れれば、それはすなわち、「花見シーズン到来!」を告げる開花情報に等しい。突撃命令である。
冒頭で「人通りがまばら」と書いたが、その数少ない人通りのほとんどが「雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ」の精神でやって来たツワモノたちだ。無料案内所においても、それこそ血眼になって店舗情報を物色していた。まして今は気軽に何度も遊べない不景気なご時世、後悔しないために必死である。
「ヤツらがやってくる!」。店側もそうしたマニア心理が分かっている。あらゆるリクエストを出して長時間遊ぶ厄介な相手だが、常連でもある。生半可な気持ちで接客することはできない。「他店に取られてなるものか!」と、気合を入れて待ち受けている。
今年も、世間の人々が「寒い、寒い」と言って家に閉じこもっている間、中洲では白熱したバトルが繰り広げられていた。
(つづく)
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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