小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入問題をめぐり、政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで現職国会議員を含む元秘書ら3人が逮捕された。小沢氏は検察との全面対決を宣言し、幹事長を続投するという。元日には166人の国会議員を自宅に招き入れ、最高権力者であることを誇示したが、それらの姿勢は小沢氏のかつての政治の師・田中角栄元首相を彷彿とさせる。
ロッキード事件で逮捕・起訴された角栄氏は、自民党を離れた後も「木曜クラブ」と名づけた100人を越える大派閥をバックに、「闇将軍」として政界に睨みを利かせた。数は力を実践した政治家でもある。逮捕以来、検察との全面戦争を続け、毎年正月には自宅に多くの政治家などが参集。政界に隠然たる力を振るった。
一方小沢氏は、師と仰ぐ角栄氏のロッキード事件公判を、欠かさず傍聴した唯一の政治家である。その後、小沢氏の後ろ盾となっていた金丸信元自民党副総裁が佐川急便からの5億円の闇献金問題で失脚、さらには脱税容疑で逮捕されるに至り政界を去る。小沢氏は2人の庇護者を検察によって失ったという過去を持っているのだ。
角栄氏、金丸氏ともに公判途中で亡くなっているが、両者が主役を務めたそれぞれの事件で、小沢氏は検察への徹底抗戦を唱えたことが知られている。検察と小沢氏の確執は実に30年以上に及ぶ。小沢氏の検察への不信感は、今に始まったことではないのである。
最高権力者。正月の勢力誇示。検察との対決。どれも似通った小沢氏と角栄氏の足跡であるが、ふたりは明らかに違っている。角栄氏にあった絶対的人気が小沢氏にはないのだ。角栄氏の全盛期を知る元国会議員秘書は語る。「木曜クラブ(旧田中派)時代、田中先生が『イヨッ』と片手を上げるポーズを取ると、その周辺の国会議員や派閥の秘書軍団は知らず知らずのうちに頭を下げていた。『威光』があった。功罪ともに語られるが、端倪すべからざる人物だったことは確か。料亭の下足番にまで心づけを渡していたのだから。でも小沢さんにはそれがない。恐怖政治の体現者でしかない。恐怖では人の心までを支配することはできない。田中先生がロッキードで逮捕された後でも、派閥の人数は増え続けた。言われるような金の力ではなかった。人を引き付けてやまない魅力が、田中先生にあったが小沢さんにはないということ。状況が悪くなれば、小沢さんは一人になる」。
国民的人気を有した角栄氏だが、竹下登元首相らが「創世会」(その後『経世会』)を設立し離反。失意のうちに世を去る。歴史は繰り返すというが、民主党議員が自立するのは何時になるのだろう。
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