2010年の世界の新潮流として、「アメリカの凋落と中国の台頭」を指摘する専門家が多い。確かに「G2」とか「チャイメリカ」という造語が流布されている。これからの10年はアメリカと中国の力関係の逆転が起こるかどうかが大きな注目点であろう。
しかし、アメリカも中国もかつてない国内的な経済危機に直面しており、下手をすれば両国とも内部崩壊の恐れすら危惧されるほどだ。就任1年を迎えたオバマ大統領は支持率の急落に右往左往している。いまだ超大国の冠を取ろうとしないアメリカの苦悩を象徴している。
そして近未来のスーパースターとして期待が集まる中国。不動産バブルの様相を呈しており、政府も躍起に経済の引き締め策に走り始めた。両大国ともに足元に大きな地雷原を抱えており、その前途は厳しいといえよう。
まずはアメリカの状況を分析してみよう。自動車王国アメリカを象徴するデトロイト。この町で2009年12月、失業率が50%に達した。デイブ・ビング市長によれば、「公の失業率は27%であるが、実際には職探しを諦めた市民や、意に反して短時間しか仕事に就けない労働人口を勘定に入れれば、デトロイトの失業率はすでに50%を超えている」とのこと。成人の2人に1人は失業という前代未聞の雇用危機に直面している。
マイケル・ムーア監督の生まれ育ったデトロイト。街には失業者があふれ、市の財政状況も火の車となっている。その結果、犯罪や事故もウナギ登り。引き取り人のない遺体の山が市の巨大な冷凍安置所に溢れるという異常状態さえ生まれつつある。かつてGM、フォード、クライスラーのビッグ3の本社が揃い、アメリカの富を集めた中心地とはとても思えない悲惨な光景が広がっている。
同市の財政は3億ドルを超える税収不足が災いし、日常的な公共サービスはほとんど中止されてしまった。警察や消防も機能せず、住宅も商店街も荒れ放題。学校教育も瀕死の状態に陥っている。実は、こうした世紀末的状況はデトロイトに限ったことではない。
【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。
ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊は『ノーベル平和賞の虚構』(宝島社)。近刊には『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)、『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。
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