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中洲バトルロワイヤル

中洲バトルロワイヤル2010(4)~100年前の窓ガラスから
中洲バトルロワイヤル
2010年1月22日 11:07

 西中洲にある「旧福岡県公会堂貴賓館」(以下、貴賓館)をご存知だろうか。場所は、中洲と天神を結ぶ「福博であい橋」のたもと、天神中央公園の敷地内である。1984年5月21日に国の重要文化財に指定されている。
旧福岡県公会堂貴賓館
 福岡市役所からも中洲からも徒歩約1分という場所柄、貴賓館の建物自体を見たことのある人は多いはずだ。意外なことに、その沿革について知る人は少ない。地元の人々からも「中に入れるなんて知らなかった」、「重要文化財なの?」という声を耳にする。
管理人によれば、1日の見学者数が平均15人くらい。訪れる人は、地元の人と建築マニアがほとんど。観光客が来ることは珍しいという。たまに、自由行動の修学旅行生が、「何かと思って入ってみた」という程度だそうだ。

 貴賓館が建てられたのは、1910年(明治43年)。今年でちょうど100周年を迎える。館内には、建設時のガラスが残っている窓もあり、そのところどころに気泡を含んだ作りは歴史を感じさせる。100年もの間、貴賓館は川向かいから中洲を見守ってきたのだ。
 入り口にある昔の地図を見れば、付近の町並みがどれだけ変化しているかが分かる。ボランティアのガイドさんによれば、「昔、このあたりは畑ばかりだった」という。中洲の華やかさはいっそう引き立っていたことだろう。

 今は変化のスピードが速い。昨日行った店が翌日に店じまいしているご時世だ。「閉店3日前に突然告げられたの・・・」とは、キャバクラ嬢として年が越せなかった女の子のボヤき。ともに無職になってしまった仲間と集い、行く末について話し合っているという。
 日本に来て5年が経つフィリピンパブで働く女の子も、ライフスタイルがすっかり変わった。大学生の弟を持つ彼女は、母国に月々8万円を仕送りしている。昨年から客がどんどん減っていき収入も減った。足りなくなった分は、昼間にベッドメイキングのアルバイトをして補っているという。休みはない。

 一方、貴賓館にも変化が起きている。昨年、1階にフレンチレストランがオープンした。かつては皇室の方々もご宿泊なされた建物である。格別の高級感の中でランチを楽しめる。あまり人が訪れなかった貴賓館は、今やセレブレディーたちの憩いの場となっている。

 止まない雨はない。忘れられかけた貴賓館も、市民に親しまれる存在へ生まれ変わろうとしている。「人々に幸せをもたらす変化が訪れて欲しい」。100年前の窓ガラス越しに中洲の街を眺めながら、そう思った。

(つづく)

長丘 萬月(ながおか まんげつ)
 1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。


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