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[提言・2010年の意識改革②] 成長続ける中国経済 GDP規模で日本抜く(下)
特別取材
2010年1月 2日 08:04

~西南学院大学 商学部教授 立石 揚志 氏

 2009年の経済成長率は、中国政府自身が「8%確保は間違いなし」と正式に表明しました。直近の予測で、IMFは8.5%、OECDは8.3%としています。
 2010年については、IMFは9%、OECDは10.2%としていますが、中国は最近になって複数のシンクタンクがやや慎重な数字を出しています。
 国務院直轄のシンクタンクである中国国務院発展研究センターが出した「未来10年の中国経済予測」では、2020年までのGDP平均年間成長率を、基準的シナリオで8.25%、悲観的シナリオで6%、楽観的シナリオで9%としています。
 09年の最終数字が確定するころには、中国は日本をGDP規模で上回っている可能性があり、いずれにしても2010年には日本を抜くことは確実です。
 さらに中国が基準的、つまり標準シナリオで成長し、アメリカが3%以下の成長率を仮定した場合は、2020年代の中ごろに世界一の経済大国になるという試算が成り立ちます。しかし、その時期でも、一人当たりのGDPは6,600ドル程度とされます。
 それも現在のIMF為替レートでの計算であり、人民元の切り上げがあればさらにこれが早まりますし、物価を加味した購買力平価では、中国の経済規模は5倍以上ということになります。
 ただし、人口構成が経済発展や持続性に影響を与える点を重視すれば、中国の労働人口は2013年ごろに増加テンポが鈍り、高齢化が急速に進む見通しです。人口の多さによる大国化はさらに進むが、経済成長が早めに鈍化する可能性があります。

<おわりに>
 中国政府系のシンクタンク国家消息センターは12月3日、2010年の国内総生産GDP成長率が8.5%前後になるとの予測をまとめました(中国社会学科院は9.1%)。国際機関の予測よりむしろ慎重な姿勢です。やはりアメリカをはじめとする先進国景気の二番底に対して、警戒心が強いためと見られます。
 2020年までを見通した前述の予測も、もしかすると下方修正しなければならないことになります。人口構成を見ても、労働人口の減少が2013年ごろから始まること。都市化の速度も速まり、ほぼ5割が都市住民となった場合、政治改革、社会改革、民主化の問題などが一気に噴出す可能性もあります。
 中国共産党と政府が合同で毎年1回の「中央経済工作会議」が12月5日から7日まで開かれました。この会議で2010年のマクロ経済政策の基本方針を決めます。金融経済対応でとってきた「積極的な財政政策」と「適度に緩和的な金融政策」を2010年も続ける方針を正式に決めました。背景には、内需転換方針に大きく転換しようとはしていますが、これまで約40%を輸出に依存していた経済成長を維持するのは容易ではなく、個人消費の拡大などを目指した景気対策を優先する姿勢を前面に打ち出しました。
 中国経済の構造上の弱点は政府首脳も十分認識しているようで、会議に出席した胡錦濤国家主席は「経済の発展方式の転換を加速させることは重要で、差し迫った課題だ」と演説しました。
 4兆元の財政支出など、景気刺激策の効果で当面は経済回復基調が鮮明になっている半面、金融緩和の長期化で不動産バブルやインフレの懸念も広がっています。また、公共投資に頼った経済成長から、個人消費拡大が急務だとする認識も打ち出しています。人民元については具体的な言及はなかったようです。
 基本的にはドルペッグの状態を維持し、単独での人民元切り上げには動かないと見たほうがよさそうです。
 大雑把に考えれば、中国は大都市のバブルとその崩壊過程を繰り返しながら、別の言い方をすれば不動産と株価の乱高下をしながらもあと10年ぐらいは成長を続けるのではないかと思われます。
 中国政府は外国の経験を熱心に学び、長期的視点に立って戦略を描いているように見えます。
 2020年ごろには、世界は紛争から協調へと前面転換し、米軍は日本から撤退、朝鮮半島の平和も約束され、日韓海底トンネルを実現し、日中韓を中心として、アメリカも含めた太平洋諸国にまたがる広い経済圏のなかで繁栄する――そんな初夢でも見たいものです。

<立石 揚志(たていし・ようじ)氏>
1940年中国・上海生まれ。丸紅株式会社入社後、海外営業統括部や国際事業部を経て大連支店長など、主に中国を舞台に活躍。98年より西南学院大学商学部教授(海外投資、貿易実務他)。北九州市立大学をはじめとした非常勤講師や学会理事なども数多く努める。

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2011年6月24日 07:00
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