<『どこに現場があるか』不可解>
福岡のゼネコン業界において、上村建設(本社:博多区)が完工高200億円台をキープして断トツである。続くのが北洋建設(本社・南区)。2009年10月期には115億円の工事高を誇る。どの業者も「100億円を超える実力の北洋建設だが、どこに現場があるのだろうか?」と首を捻る。確かに改修工事の現場は目立つが、それだけでは100億円の規模を凌ぐ仕事は捌けないはずだ。ヒントは、同社が九州一円に営業所を網羅している点にある。小さな工事までかき集める現場数では、同社は断トツであろう。また住友林業からの住宅受注の工事量も多い。目立たないところで稼ぐことを信条にしているのだ。
<戦略眼の卓越さ>
同社の会長・脇山章二氏は、「これから10年間はデフレの時代が続く」と喝破する。「世界はそれなり物価アップ(2~3%の物価高)の推移のうえに経済成長率を保つであろう。日本の場合には、物価率のマイナスがプラスの成長率に転化する、充足感のない経済構造が強化されてくる」と説く。だから給料が据え置きされても、計算上では給料所得者は2~3%豊かになったという勘定になる(生活実感として、容易には余裕感は感じられないのだが)。3年間、2%の物価のマイナスが続けば、6%のダウンとなる。サラリーマンは年収が頭打ちでも、実質6%の余裕アップになるのだ。
しかし、こんなデフレ状態が続けば、企業はその体質をまるで真綿で絞められたように衰弱させられていく。コストダウンの圧力は強まるばかりだから、企業はやむなく『人員削減か、給料カット』の決断を強いられるようになる。となれば、最低でも「給料維持」ができる企業に対しては、社員サイドから「感謝・称賛・尊敬」されるようになる。あまり誇れる話ではない。日本経済の弱体化を物語っている。
さらに、末期の日本の将来を予測する。「まず、日本を代表するトヨタですら、製造拠点を外国に移す」と見通しを立てながら、脇山会長は「日本の製造業は半減する」と断言する。だからこそ経営者は、「将来の厳しさを社員のみなさんに言い続ける」使命を貫かなければならない。しんどいけれども、だ。団塊の世代は、年功序列で組織にぶら下がっていれば、何とか禄をいただけていた。牧歌的な人生。老後が保障されていたのだ。
ところが、各人一人ひとりが、『人間力』を問われる時代になった。このパワーがないと、個人も生きていけないし、企業組織も成り立たない。4,000億円のベスト電器が5年で終わった(独立経営が不可能になった)。連結1.5兆円規模のセキスイハウスも、営業戦線に覇気がない。この状態が続けばどうなるかわからない。ライバルである住友林業の住宅事業部の営業マンからは「セキスイ、組みやすし」と舐められているそうだ。
要するに、「人間力に乏しい集団は、一瞬にして敗北者になる時代である」ことを認識して、社員の個人力アップの経営に精一杯注力することが、経営上の最優先課題なのである。
だから同社としても、より良き人材をあまねく求め、社員教育に全力投入をしているという。
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