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特別取材

2010年 住宅業界を考える(2)~伝統工法について(1)~
特別取材
2010年1月28日 08:00

 一概には言えないが、欧米諸国の家は50~100年の耐用性があり、さらに手をかけて改修を行ないながら家の質を守っていく――ということをハウスビルダーの関係者から聞いたことを思い出した。
 我が国の家も、地域や町並みにマッチングした住空間─―木の香りがして、地域の歴史や生活の知恵を最大限生かした、作り手と住む人々の想いが醸し出される住居であった。
 高度成長期以降の急激な生活習慣の変化によって、画一的な建物の居住が段々とポピュラーとなった。我が国の伝統工法を生かした居住は次第に減り、今や希少な「価値」となった。当然ながら、記者が住む市街地付近でも、我が国の伝統工法が生かされた住居を見かけることはほとんどない。スマートで洗練されたデザインの住宅、デザイナーズマンションなどなど…町内の風景が、何か無機質なものに感じてしまう。
 平屋建ての縁側や縁大があり、板の間・畳・床の間(和室はあっても床の間がないという家が最近の傾向であるという)、数寄屋造り・町屋…このような住空間は、我が国の生活スタイルや季節にマッチした家造りのなせるものであった。
 1970年代からはプレハブ住宅が普及し、住宅の工業製品化と大量製品化が進んだ。鉄骨構造や鉄筋コンクリートの住宅が増え、木造軸組工法の住宅にもプレカット材が使われるなど、近年の我が国の住宅は伝統工法から大きくかけ離れた。60年に木材の輸入が自由化されてからは、扱いに相応の技能が要求される国産材は敬遠されがちになり、安易に施工できる輸入木材が主に使われるようになった。建材でも、従来の日本建築には欠かせなかった漆喰や藁、和紙などはあまり用いられなくなり、サイディングやアルミサッシ、コンクリートブロック、石膏ボードなど60年代以前にはなかった建築材料が多く用いられた。これに伴い住宅の高気密化や品質の均一化は進んだが、シックハウス症候群などの問題も発生している。
 部屋の南北に風がよく通るよう考えられた間取り、大きな開口、化学製品の断熱材にはない高い吸湿性能を持つ荒壁塗りなど、我が国の伝統工法を用いた住空間造りが、今後の業界にとって一つのキーワードになるのではないだろうか?
 エンドユーザーは、現況のこの荒んだ世のなかに身を置き、心身ともに疲れ果てている。心安らぐ空間が必要であることは間違いない。それをサポートしてくれるのが、伝統工法を用いた我が国古来の住空間なのでは、と思えてならない。

(つづく)

【河原 清明】

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